財政赤字がマネーを創出する

財政赤字がマネーを創出する

6月16日から17日までの二日間、日本銀行は『金融政策決定会合』を開きました。

米国との金利差から、いよいよ円安が進行している現状にあっても、日銀としてはひきつづき大規模緩和を継続するという方針を決めました。

その理由を日本経済新聞は「景気回復はまだ道半ばで、緩和縮小は時期尚早とみているため」と報道していますが、日銀は「景気回復は道半ば…」という言葉を公式には使っていません。

日銀の公式資料をみますと「わが国の景気は新型コロナウイルス感染症や資源価格上昇の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している」というのが日銀の見解です。

いずれにしても、いつのまにか「景気の善し悪し…」に話がすり替わっていることがまことに腑に落ちません。

景気という実に抽象的な概念で「善いかもしれないし、悪いかもしれない…」みたいに言われても、あまり意味を成しません。

そもそも政府と日銀は2013年1月、共同して「デフレ脱却と持続的な経済成長を実現すること」を公式にコミットメントしました。

ゆえにその年の4月から、生鮮食品以外の物価上昇率(コアCPI)2%を目安として、いわゆる黒田バズーカと言われる「量的・質的金融緩和」が導入されたわけです。

日銀が市中銀行の保有する国債を大量に買い入れることで日銀当座預金というマネタリーベースを拡大し続け、加えて2016年からは、指値オペや連続指値オペといった手段をつかって長短金利を操作するイールドカーブ・コントロールを実施しています。(10年物国債の金利は0%程度で推移するように誘導)

その際、改めて日銀は、コアCPIが安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続することを約束しています。(オーバーシュート型コミットメント)

なので日銀が発表すべきは景気の善し悪しではなく、「デフレを脱却できたのか、できないでいるのか…」です。

ご承知のとおり、大規模な金融緩和政策を行ってきたものの、未だに日銀から「デフレを脱却した」という宣言は成されていません。

実はことしの4月、デフレ脱却ではなく円安や輸入物価等の値上がりから、はじめてコアCPIが2%を超えています。

コアCPIには輸入に依存するエネルギー価格が含まれていますので当然です。

一部メディアから「コアCPIが2%に達した以上、日銀は金融緩和を縮小するのではないか…」という憶測がでていましたが、できるわけがありません。

円安が進行しているとはいえ、依然として日本経済はデフレ(需要不足)なのですから。

コアCPIが2.1%に達した4月でも、生鮮食品及びエネルギーを除く総合消費者物価指数(コアコアCPI)は、わずか0.8%です。

コアコアCPIは、4月まではマイナスで推移してきたほどです。

しかも、内閣府が少なめに見積もって発表しているデフレギャップでさえ、現在の日本経済には21兆円もの需要不足が生じています。

いつも言うように日本経済は今、需要不足(デフレ)と、円安や輸入物価等によるコストプッシュ・インフレが同時進行しています。

「コストプッシュ・インフレは問題だけれども、未だにデフレを脱却できない以上、金融緩和を縮小することなど不可能である」というのが黒田日銀総裁の本音かと思われます。

そもそも円安そのものは問題の本質ではなく、円安にともなう物価の上昇こそが問題なのですが、それでも敢えて日米金利差による円安の進行を食い止めたいのであれば、要するに日銀に利上げをさせたいのであれば、コストプッシュ・インフレを克服するための各種投資と、デフレを払拭するための需要創造を同時に行うほかありません。

そのために必要不可欠なものが、政府のカネ(財政赤字)です。

しかし我が国では依然として「財政赤字を垂れ流すのは無責任だぁ〜」という意見が根強い。

でも、財政赤字がなければ、経済成長どころかデフレを克服することすらできないのが事実です。

相変わらず朝日新聞は「歳出を増やすなら財源を示せ!」と社説で偉そうに述べていますが、だから財源は財政赤字だっつうの!

おカネ(貨幣)とは、負債である。

これは歴然たる事実であり、真理です。

これが理解できないと、朝日新聞や日本経済新聞のように「財源は税収である」と永遠に誤解し続けることになります。

財政赤字がマネーを創出する、という事実を知るべきです。