国内需要を下押しするコストプッシュ型インフレ

国内需要を下押しするコストプッシュ型インフレ

13日の週、円相場は24年ぶりという記録的な円安をつけました。

と思ったら、その2時間後には2円以上も円高が進むなど激しい値動きとなっていましたので、市場関係者も連日気が気ではないでしょう。

24年ぶりの円安にも驚きますが、円の実質実効為替レートもなんと1980年以降の最安値を更新しています。

実質実効為替レートは、お互いの国の物価上昇率(インフレ率)が加味されますので、20年以上もの長きにわたってデフレが続いた日本の実質実効為替レートが安くなっているのも当然です。

ここまで円安が進んでいるのですから国内の輸出産業にとって有利な展開のはずですが、生産工場の海外移転を進めてしまったグローバル経営が災いして意外にも円安の恩恵にあずかれていない様子です。

一方、円安に伴うコストプッシュ型インフレが日本経済をさらにデフレ化させています。

輸入物価の高騰によって強制的に商品価格が引き上げられたところで、その値上がり分は輸出業者の取り分であって日本の生産者の取り分ではありません。

よって、国民の所得は1円も増えないわけです。

国民の所得が1円も増えない状況で、物価上昇で支出金額のみが増えるということは、可処分所得が減少するということです。

可処分所得が減れば購買力も弱まりますので、ますますもって経済はデフレ化するわけです。

ひきつづき為替市場において「今後も金利の高い米国のドルが、金利の低い日本の円よりも高くなる…」という考え方が支配的になれば、実際に円が売られドルが買われることにより、さらなる円安に向かうことでしょう。

昨日のブログでも述べましたとおり、円安ドル高を是正したいのであれば、財政拡大によって利上げ可能な環境を構築するほかありません。

ただ、断っておきますが、我が国はけっして「輸入大国」ではありません。

日本の輸入依存度(GDPに占める輸入額)は13.6%で、内需大国のブラジル、米国に次ぐ。

問題は、日本の輸入の多くがエネルギーや食糧などの「必需品」であることです。

だからコロナ禍やウクライナ危機を受けて世界的にエネルギーや食糧価格が高騰したことで日本の輸入物価が一気に上昇したわけです。

これらの価格上昇は一過性のものではなく、ある程度の期間継続される見込みです。

私たち日本国民は、自分たちがどれだけ胃袋について「外国」に依存していたのかを思い知らされることになるでしょうし、あるいは今後、電気料金の高止まりが続くことによって、改めてエネルギー安全保障の重要性を認識させられることにもなるでしょう。