公衆衛生安全保障

公衆衛生安全保障

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、連日、メディアでは実に幼稚な報道が垂れ流されています。

それも志位和夫(日本共産党委員長)のツイートを笑えないレベルです。

いいかげんに辟易としてきましたので、本日のブログは話題を変えたいと思います。

さて、米国による覇権(一極秩序)の終わりがプーチン大統領の「ウクライナ侵攻の決断」を容易にしたように、覇権国無き時代の国際政治は不確実性を増していきます。

新型コロナパンデミックという、この一世代における最大規模のグローバルヘルス危機に対して、必ずしも各国の国際協調がうまく進んだとは言えません。

ここにも、それを主導すべき覇権国の力の衰退が影響しています。

ただ、今世紀に入って最初の公衆衛生上の危機は、実は新型コロナウイルスではありません。

その危機とは、20年ぶりに発生した2度目のSARS(重症急性呼吸器症候群)のアウトブレイクです。

最初の流行となった2003年ごろ、当時のWHO(世界保健機構)事務局長は「SARSは警告だ。最先端の公衆衛生システムを限界に追い込んだ。かろうじて防衛システムが機能したにすぎず、次回は今回ほど幸運ではないかもしれない」と発言しています。

その予言は当たり、次なるグローバルヘルス危機に備え、新たな公衆衛生システムを構築してこなかった国際社会をあざけ笑うように、今まさに容赦のないパンデミックが世界を襲っています。

もしも今後とも頻繁にパンデミックが起きるようなことがあれば、現状の公衆衛生システムのままでは国民経済はおぼつかない。

その点、今回のパンデミックにおいて、もしもmRNAワクチンの存在がなければ、その影響はもっと深刻だったかもしれません。

新型コロナウイルスのワクチンは、どれもまだ誕生したばかりで、それぞれに複雑な問題を抱えているのも事実です。

例えば国や地域間で生産能力の格差が生じていますし、現状ではmRNAワクチンの製造拠点の多くが北米とEUにあり、アジアでmRNAワクチンを製造できる製薬会社は中国とインドに数社あるだけです。

このため途上国向けmRNAワクチンのほとんどは実に困難な長距離輸送を伴います。

加えて、mRNAやその他のワクチンを製造する成分は世界各地から調達しなければならず、ファイザー・ビオンテックの推計によりますと、同社製ワクチンの製造、充填、製品化、供給には28の国境を通過しなければならないとのことです。

むろん、それらの国々での税関検査やサプライチェーンによる遅延をも織り込んでおかねばなりません。

また技術的な最大の問題点は、mRNAはコロナウイルスが細胞に付着して侵入するためのスパイクタンパク質に対する抗体を体内でつくるように指示を出すわけですが、ワクチンの生産に必要なmRNA分子と脂質ナノ粒子は抗体をつくり出すための反応だけでなく、免疫反応を引き起こしやすい。

ゆえに、多くの人がワクチン接種後に短期間ながら不快な副反応を経験しています。

3回目の接種を躊躇している人が多いのは、そのためかと思われます。

それともう一つ、このブログでも再三にわたって指摘してきましたが、mRNAワクチンの「脂質ナノ粒子」という脂肪球は摩擦と温度に対し極めて脆弱なため輸送の際に困難が生じます。

いわゆる『練馬モデル』はそのリスクを無視しています。

ちなみに、川崎モデルは、そのリスクをきちんと回避しています。

以上のように、mRNAワクチンには多くの課題があることは否定しません。

しかしながら、2020年12月に緊急承認されて以降、mRNAワクチンが迅速な対応に必要な多くの特質を備えていることを立証したのもまた事実です。

なによりも、一定の安全性を確保しつつ迅速に製造でき、強い免疫反応が得られ、1回目と2回目の接種間隔をあまり空けずに済み、なおかつブースター接種も可能で、デルタやオミクロンといった懸念される新たな変異株が出現しても迅速な対応が可能です。

深刻な脅威をつくり出す変異株はオミクロンが最後ではないはずです。

さらなる感染症による犠牲とそれに伴う社会的及び経済的な混乱を避けるためには、より効果が持続する新ワクチンを迅速に開発・製造できる能力をもつことで乗り切るほか今はないと思います。

そして我が国もまた、グローバルヘルス危機に対処可能な公衆衛生システムの構築に向けて貢献できる国であってほしい。