生産年齢人口比率が60%を切った日本

生産年齢人口比率が60%を切った日本

国内の生産活動(GPD創出活動)を中心となって支えている人口帯のことを「生産年齢人口」と言います。

OECD(経済協力開発機構)は、これを15~64歳の人口と定義しています。

因みに、生産年齢人口に対して、14歳以下を「年少人口」と呼び、65歳以上を「老年人口」と呼んで統計的に区分けしています。

あくまでも統計的な区分けとしてですが、「生産年齢人口」は労働力の中核として経済全体に活力を生み出す存在です。

ご承知のとおり、世界では今、先進国を中心に高齢化が進んでいます。

高齢化とともに当然のことながら15−64歳人口が全体に占める比率、則ち「生産年齢人口比率」も低下しています。

世銀によると世界平均は65.2%(2020年時点)ですが、我が国のそれは59.2%であり、Ḡ7(先進7ヶ国)で唯一、60%を切っています。

生産年齢人口は労働力(経済の供給を担う人口)であることはもちろんのこと、最大の消費者層(大きな需要を担う人口)でもあります。

ゆえに、もしも政府が生産年齢人口比率の減少に対し何もせず放置すれば国家の衰退は免れません。

ただ、生産年齢人口比率の低下は、日本のように…
①経済がデフレになるほどに供給能力が過剰で、
②自国通貨で国債を発行できる主権通貨国である
…場合には、ピンチではなくむしろチャンスです。

働き手が減った分、政府や企業が各種の投資(公共投資、設備投資、技術開発投資)を行うことで、働き手一人あたりの生産性を向上させることができるからです。

例えば、交通インフラの脆弱な田舎に、従業員3人の一軒の『おにぎり屋さん』があったとしましょう。

このおにぎり屋さんでは、一人の働き手が一日に100個のおにぎりしか作れなかったとします。

一人100個 ✗ 3人 = 300個

ところが、生産年齢人口比率の低下により従業員がたった一人になってしまいました。

一人100個 ✗ 1人 = 100個

といって、単価を3倍にするわけもいかない。

その日から、このおにぎり屋さんの売上はそれまでの3分の1になってしまいます。

もしもこんなことが日本中で起こったら、まちがいなく我が国は発展途上国になります。

さてそこで、政府は交通インフラを整備し、おにぎり屋さんは設備投資と技術開発投資を行いまいした。

すると、たった一人の従業員で、何種類ものおにぎりを一日で500個つくる生産能力をもつことができました。

しかも政府が交通インフラを整備してくれたお陰で隣町までの移動距離が大幅に短縮されこともあり、商圏が広がり配送出荷量も増え、遠方から来る店客も増えた。

そのために、一日の最大生産量の500個がすべて毎日のように売切れました。

さて、このとき、おにぎりの単価が以前と同じだったとして、一人となった従業員が生産した付加価値(GDP)はどうなったでしょうか。

おにぎりの単価を100円として換算していましょう。

100個 ✗ 100円 = 1万円

500個 ✗ 100円 = 5万円

なるほど、一日に1万円だったGDP(名目GDP)が、政府と企業の投資によって5倍に増えました。

これこそがまさに「生産性の向上」です。

則ち、例え生産年齢人口が減少しても、各種の投資によって「生産性の向上」さえ実現できれば、着実に経済は成長します。

経済とは、要するに付加価値の生産のことですので、生産性を向上させること以外に経済を成長させる術はありません。

問題は、投資と言うと必ず「財源がぁ〜」というご批判がでることです。

しかしながら何度も言うように、日本のように…
①経済がデフレになるほどに供給能力が過剰で、
②自国通貨で国債を発行できる主権通貨国である
…場合にはそのご懸念は無用です。

なお、最もやってはならないことは、投資による生産性の向上を否定して、労働移民など外国から低賃金労働者を受け入れ生産年齢人口の不足を補おうとすることです。

実は安倍政権以来、日本はそれをやろうとしていました。