今なお「コメの価格が上がったのは、中間業者である農協が搾取しているからだ…」という意見は根強い。
むろん、根も葉もない言いがかりです。
何度でも言いますが、昨年来のコメ不足は減反政策に伴う供給力不足に加え、猛暑による高温障害、あるいはインバウンド需要の増大等々の複合要因が重なり合って発生しています。
にも関わらず「農協による搾取」が原因であるかのような風説が流され、それを信じている人たちもけっして少なくはありません。
残念ながら、流通過程における商社業務の役割、あるいは農協そのものの役割を理解されていない人たちが多い。
コメ不足は、このままいくと今年7月、8月あたりに更に深刻化するらしい。
7月といえば、まさに参議院議員選挙真っ只中です。(7月3日告示、7月20日投開票)
そんな折、前農相の失言が発端となり、なんと農協潰しの急先鋒たる小泉進次郎氏が農水相に就任してしまいました。
その小泉農相をメディアが持ち上げていることもあって、再び小泉劇場に火がつきかけています。
これには二つの危機があります。
一つは、自民党敗北が濃厚だった参議院選挙(その前の東京都議会選挙も含めて)ですが、小泉人気を梃子に再び自民党が息を吹き返す可能性がでてきたという危機、もう一つは農協解体の動きが加速化するという危機です。
これら二つの危機は、わが国の食糧安全保障の危機そのものと言っていい。
昨日のブログでも申し上げましたとおり、食糧危機はある日突如として食べ物が消えて無くなるわけではありません。
まずは価格の上昇からじわじわとはじまるのです。
供給力不足を主因とする昨今のコメ価格の上昇は、まさに食糧危機のはじまりを意味しています。
実は、減反政策と緊縮財政により日本の食糧自給力を低下させること、また農協の解体により農協の持つ金融市場と商社事業を開放させること、この二つは宗主国(米国)様が大いに望んできたことでもあります。
その期待に応えるのが、敗戦利得者政党である自民党の党是なのでしょう。
すなわち、属米政党の自民党と緊縮財政の財務省の存在こそが、わが国における食糧危機の元凶なのでございます。
ちなみに「農協解体」と言うけれど、わが国の農協は利益率の高い金融事業(農林中金、JA共済)や黒字支所などと収益を合算し全体としてサービスを継続することで国家の食糧安全保障を担い、地域のインフラストラクチャーとしての役割(病院事業、ガソリンスタンド事業、スーパー事業など)を採算度外視で果たし続けています。
コメの流通を担っている全農は常に赤字であり、搾取などしていません。
その赤字を農林中金やJA共済の黒字で補うことで、わが国の食糧安全保障を支えているわけです。
また、過疎化が進む地方の人たちの生活は、協同組合たる農協(株式会社ではない)が提供するインフラに依存しているのをご存知でしょうか。
もしも農協が解体されてしまえば、地方の過疎化はさらに深刻化します。
昨今、SNS等でご活躍中の功利主義者たちは「過疎化した地方など潰して大都市に集約すればいい」などと言っていますが、わが国は世界でも稀な自然災害大国です。
人々が大都市に集約すればするほど、国家としての災害対応能力は脆弱化してしまいます。
地方に人口を分散しなければならないのは、超自然災害大国であるわが国の宿命なのです。