わが国で働く者たちの実質賃金と可処分所得を引き下げている要因は多々あれど、主犯格は何と言っても「消費税」と「社会保障負担」ではないでしょうか。
要するに国民負担率の高さです。
国民負担率とは、国民の所得に対する「税金」と「社会保険料」の負担割合を示したもので、上のグラフのとおり、わが国の国民負担率は右肩上がりで推移し続け、ついに50%にまで達しようという勢いです。
いわゆる「5公5民」というやつですね。
ちなみに、「江戸時代は6公4民で酷い時代だった…」などと言う人たちもいますが、それは嘘です。
あの時代、総人口に占める武士の割合は僅か1〜2%なのに、生産高の60%をも武士が搾取したらマクロ的な数字の辻褄が合わない。
おそらくは、後の明治政府が広めた作り話かと思われます。
さて、話をもどしますと、とりわけエグいのは社会保障負担の伸び率です。
私が生まれたころは5.4%にすぎませんでしたが、今や約4倍の18%にまで増えています。
結果、全体的に国民負担率が引き上げられた格好で、引き上げ率からいったら消費税よりも酷い。
会社と従業員が折半で負担する社会保険料率に至っては、1970年度は8%でしたが、2024年度には30.12%にまで増えています。
すなわち、1970年度は会社が4%、従業員が4%の負担だったわけですが、2024年度には労使で15%ずつ負担しているわけです。
消費税と同様に、このことがまた企業の雇用を正規社員から非正規社員に切り替えさせ、世に個人事業主や派遣社員を増やした要因です。
日本の雇用環境を悪化させ、可処分所得を減らし続けたのも宜なるかなです。
そうしたなか、石破総理が5月19日の国会(参議院)で「日本の財政状況(政府債務対GDP比率)はギリシャよりもよろしくない」と発言しました。
要するに石破総理は「財政状況がギリシャよりも悪いから消費税減税などする気はない…」とでも言いたいのでしょうが、全くの無知発言です。
ギリシャは共通通貨ユーロ建て発行した国債の返済ができずにデフォルト(債務不履行)しましたが、わが国の国債は全て自国通貨(円)建てで発行されているため、日本政府が返済できないことなどあり得ません。
ユーロを発行できないギリシャ政府と、円を発行できる日本政府とを同一視して論じるお〇〇さんな発言です。
それに日本の場合、国債の52%を既に政府の子会社である日本銀行が保有していますので、事実上、わが国の政府債務対GDP比率は120%程度であり、その水準は他の先進国とほとんど変わりません。
仮に、わが国の財政状況が本当に危うい状態にあったとしても(実際にはないのですが…)、日本の総理として詭弁を弄してでも国内外に日本の財政力の強さをアピールすべきではないでしょうか。
なのに真実を見ようともせず「日本の財政はギリシャよりも悪い」などと喧伝する始末ですから、心底たちが悪い。
きのう農水相を辞任した江藤氏の失言よりも、レベル的には石破総理の失言のほうがはるかに罪は大きい。