市バスの赤字と街路事業

市バスの赤字と街路事業

21世紀を生きる私たち日本国民の約7割は、いわゆる「都市」に住んでいます。

そうした都市において、安全かつ快適な生活と機能的な活動を実現するために欠かせないのが「街路事業」です。

といっても、おそらく多くの人たちにとって「街路事業」は聞き慣れない言葉だと思われます。

都市計画区域の中には、高速道路、幹線道路、歩行者・自動車共存道路等々、多くの道路があります。

これらのうち、都市計画上必要と認められ、都市計画決定(都市計画法11条1項の規定による)されたものを都市計画道路と呼び、都市計画道路を整備する主要なものとして街路事業があります。

この街路事業で整備される道路は、むろん道路法上の道路でありますが、道路法上は「街路」という道路はなく、事業名称として「街路」が存在しています。

ちょっと解りづらいかもしれませんが、要するに行政上、言葉の整理をしているだけです。

ぶっちゃけ、国土交通省が未だ建設省と呼ばれていたころ、都市局が所管していた道路を「街路」といい、道路局が所管している道路とは区別されていた名残が今も残っているだけの話なのでございます。

因みに、土地区画整理事業または市街地再開発事業として整備する都市計画道路も街路に含まれます。

いずれにしても都市での生活や活動にあたり極めて重要な交通インフラを整備するのが街路事業なのでございます。

なお、街路には多様な機能があることは、折に触れてご説明させて頂いているところです。

例えば街路を整備することにより、交通流が円滑化することはもちろん、都市のオープンスペースとしての住環境を維持する機能が高まります。

また、災害発生時には被災者の避難路、及び救助のための救援路となり、火災発生時には延焼を遮断する防災空間としての機能を果たします。

あるいは街路が整備されることにより、その地下空間に電気、ガス、上下水道、電話線等々の都市インフラを収容するための空間機能を果たし、沿道や中央分離帯を緑化することで環境機能も果たすことができます。

さらには街路が整備されることで、街区が形成され、その位置、規模、形状が規定されるために、沿道の土地利用の高度化が促されますので都市の面的な発展性に大きな影響を与えることになります。

このように街路は単に歩行者や自動車等の交通空間として存在しているのではないことをご理解頂きたい。

例えば次のような事例もあります。

川崎市が運営している公共交通機関である『市バス』は全ての路線が赤字路線です。

そのため当局(川崎市交通局)は、すこしでも経営を改善しようとして路線を減らしたり、運行数や停車場の数を減らしたりするなどの対策を講じているわけですが、当然のことながら、そのことは市バスを利用せざるを得ない多くの市民の利便性を損なっています。

市バス路線が赤字化する理由の一つとして、本市の街路整備や都市計画道路整備が遅れているため市街交通の回遊性が乏しいことが挙げられています。

市街交通の回遊性の乏しさが、路線の採算性をさらに悪化させていると言われているわけです。

その点、私の住む多摩区は典型的です。

都市計画道路の整備率は未だ6割を充たしておらず、市内7区のなかでも最低水準です。

全国に20ある政令指定都市のなかでも、川崎市の都市計画道路整備率は77%で下から数えて5番目の16位です。

なお、車線数も少なく交差点スペースも狭小で、JR南武線や小田急線など踏切の数が32箇所もある多摩区において交通渋滞が絶えないのも当然で、これらのことも相まって市バス路線が赤字化する要因と考えられます。

そもそも川崎市の道路網が貧弱なのは、まさに都市計画ゼロの「革新市政」時代の名残ですが、こうした街路整備の遅れが都市での生活や活動の妨げになっていることをぜひ知ってほしいと思います。

この遅れを取り戻すのは容易なことではありません。

ゆえに私は川崎市議会において、今からでもできる即効性ある対処策を議会質問を通じて提言させて頂いております。