今、政府がやるべきは財政赤字の拡大だ!

今、政府がやるべきは財政赤字の拡大だ!

2021年の我が国の政府債務残高(対GDP比)は256.9%となり、主要先進国の中で最悪の水準となっています。

これをもって次の様に主張する方々がおられます。

「この水準の債務を抱えている国は他にスーダンとベネズエラだけだ。だから早急なる財政健全化(債務縮小)が必要だ」と。

そういえば、かつて米国の格付会社が日本国債をアフリカのボツワナ共和国並みに低い格付けをしたことがありましたが、彼ら格付会社は、その国債が自国通貨建てなのか、それとも他国通貨建てなのかの区別をしていません。

ゆえに当時の財務省は、外国格付け会社宛に「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」という、実にまともな意見書を提出しています。

(財務省は、当時だけはまともだったのか…)

財務省が外国格付け会社に意見したとおり、自国通貨建てで国債を発行している日本政府にデフォルト(債務不履行)などあり得ません。

なので債務残高(対GDP比)を減らそうとする必要はなく、むしろ財政健全化に向けた努力などしてはならないのです。

なぜなら、政府が財政赤字を削減しようとしてもどうせ徒労に終わるからです。

とりわけ、財政の健全化を主張する人たちは、①増税(税率の引き上げ)と、②輸出増による経常収支の黒字化の必要性を説いています。

しかしながら、どんなに「税率」を引き上げたところで、必ず「税収」を増やせるとは限りません。

なぜなら政府の税収は、経済全体の景気動向(GDP)に大きく左右されるからです。

政府は財政支出を削減することはできるのですが、景気悪化で税収が減ってしまえば財政収支は改善しません。

要するに、すべては景気(GDP)次第なのでございます。

前述の「歳出削減によって財政を健全化しようとしたところで徒労に終わる」というのは、そういうことです。

現に我が国においては、1990年代初頭から現在に至るまで「財政健全化」の試みが繰り返されてきましたが、財政は基本的に悪化し続けてきました。

といって財政が悪化したのは政府が無駄な支出をしてきたせいではなく、税収の減少と社会保障費など経常移転支出の増加のせいであって、その主因はひとえにデフレ経済にあります。

この20年の間に欧米諸国の名目GDPは2倍以上にもなっていますが日本のGDPはデフレ経済により横ばい。

我が国の債務残高が対GDPで欧米諸国と比較するとどうしても大きくなってしまうのはそのためです。

もしも日本が欧米並みに成長していれば、それだけで現在の名目GDPは1000兆円を超し、社会保障の財源など問題にすらなっていなかったはずです。

財政当局がどう足掻いてみても、デフレ経済が続くかぎり政府部門の赤字を減らすことはできないのでございます。

一方、②輸出増による経常収支の黒字化によって、財政健全化を目指すことは可能でしょうか。

「国内民間部門の収支+国内政府部門の収支+海外部門の収支=0」の等式に従えば、確かに財政赤字の削減は海外部門の赤字(経常収支の黒字)を増加させることで相殺可能です。

しかしながら、経常収支は内外の景況や為替レートなどさまざまな要因によって決まりますので、それを国家政策によって操作するのは非現実的です。

それに、経常収支黒字の増加を目指す政策というのは、輸出によって相手国の市場と雇用を奪うことになりますので近隣窮乏化政策となります。

外交的摩擦を避けるためにも、そんな政策は絶対に採用すべきものではありません。

どうしても政府債務残高(対GDP比)を縮小させたければ、とにもかくにもデフレ経済を脱却して分母のGDPを拡大すべきです。

デフレ経済とは、総需要(アクティブ・マネー)が不足している経済のことです。

アクティブ・マネーの不足を埋めるためには、政府が財政支出(財政赤字)を拡大しなければなりません。

その財源は、むろん国債発行(通貨発行)です。

増税は、逆にアクティブ・マネーを回収してしまうこととなり、益々もってデフレ化してしまうことになります。

我が国のインフレ率(コアコアCPI)は、未だ0%台ですので、財政赤字(=通貨発行=国債発行)の余力は充分にあります。

政府債務残高が対GDP比で250%を超えようが、それが先進国の中で最悪の水準であろうが、インフレ率が上昇していない以上、日本政府の財政赤字は少なすぎると言うべきです。

誠に信じ難いことかもしれませんが、詰まるところ日本政府が今やるべきことは財政赤字の拡大なのでございます。