節電に続き節ガスまでも!?

節電に続き節ガスまでも!?

日本の大手商社も出資し、ロシア極東で進めてきた石油天然ガスプロジェクト「サハリン2」ですが、プーチン大統領は去る7月1日、その事業主体をロシア企業に変更する大統領令に署名しました。

なお、ロシアの国営ガスプロムは、ドイツに天然ガスを送るための主要なパイプライン「ノルドストリーム」の供給を、7月11日から定期点検を理由に10日間にわたって止め、その再開後も関連設備の保守作業を理由に供給量を通常時の80%にまで削減しています。

ロシアの軍事侵攻以前、我が国はLNG(液化天然ガス)の輸入の約9%を、ドイツは天然ガスの輸入の55%をロシアに依存していました。

要するにロシアの一連の動きは、日本とドイツの両国がロシアに対する経済制裁を科すなか、天然ガスの供給停止をちらつかせることで揺さぶりをかけているわけです。

経済と安全保障は常に表裏一体であることの典型事例です。

これに対し日本政府は、ロシア以外からの天然ガスの確保にむけた動きを強めています。

7月13日、萩生田さんが、日・米・豪・印の4か国の枠組みであるクアッドのエネルギー担当大臣会合に出席したのもその一環です。

そこで萩生田大臣は、天然ガス産出国である米豪のそれぞれのエネルギー担当大臣に対し、LNGの増産と日本への安定的供給を要請しています。

日本のLNG輸入先をみますと豪州が35.8%、米国が9.5%を占めていますので、これらの国からより多く調達することでロシアからの依存を脱却しようというわけです。

萩生田大臣は「両国(豪米)から日本の立場に理解は得られた」と話していますが、仮に現地で天然ガスが増産されても、日本に運ぶためにはガスを液化する施設の増強が必要となり、実際の調達には数年単位の時間がかかると言われています。

むろん、ドイツも同様の努力をしています。

ロシア産天然ガスへの依存を減らすために、北部の港湾都市にLNG船を受け入れるターミナル基地の建設に着手するなど、この他でも各地でターミナル基地を建設して再来年にはロシア産天然ガスの輸入を大幅に減らすとしています。

ただ、日本やドイツなどのEU諸国がロシアから輸入する天然ガスの量は、合わせると世界の天然ガス貿易量の15%あまりに上ります。

これだけの量をロシア以外の産出国から調達して賄おうとすれば、ドイツが触手を伸ばす中東産のLNGなどをめぐって激しい争奪戦となり国際市場の価格が高騰するリスクが高まります。

そのような状況の中で我が国が充分な量のLNGを確保できるかどうかは不透明です。

また、確保できたとしても調達コストは大幅に上昇することが目に見えています。

実際、東京ガスは「この10月からガス料金にLNGの価格上昇分を反映させ、段階的に料金を引き上げる」と発表しています。

ご承知のとおり、私たち日本国民は食料自給率の低下から将来的な食糧危機に怯えねばならない状況にあります。

そのうえ、原発を稼働させていない中でエネルギー価格が上昇しているため、電気代の値上げと節電努力を強いられています。

こんどはガスについても、値上げと節ガスを迫られることになったわけです。

水についても、既に水道事業を外資ビジネスに献上している自治体もあります。

食料、水道、電気、ガス、国民生活の基盤が危機に晒されています。