宣言解除後の次なるリスク

宣言解除後の次なるリスク

政府は19の都道府県の緊急事態宣言、及び8つの県の蔓延防止等重点措置の適応を、期限を迎える明日(9月30日)ですべて解除することを決定しました。

ワクチンの接種開始の遅れ、そして強い感染力のデルタ株の影響も加わって、第5派ではこれまでにないスピードで感染が拡大しました。

新型コロナウイルスの陽性者は減少してきているものの、感染が広がることが懸念される冬場を控えていることを考えますと、行政としては今のうちから感染の再拡大を想定しておく必要があると考えます。

さて、政府が緊急事態宣言を解除した理由について推察してみたいと思います。

まず、新規感染者(本当は陽性者)の日毎の推移をみたとき、8月20日ごろをピークに着実に減少していることが確認されたこと。

第二の理由は、専門家たちが新たに解除の判断指標に加えた「重症患者数の動向」です。

重症患者数は9月27日の時点で1,106人となっており、これは第3派のピークとほぼ同水準で、現在でも重症者の多い地域があるわけですが、とはいえ新規感染者数に遅れるかたちで全体としては減少に転じていることが確認できます。

もう一つの解除の指標となっている「自宅療養者+療養先調整中」の推移をみても、これまた全国的に減少していることが確認できます。

このほか、病床使用率も下がっており、医療の逼迫度合いは軽減されているとみなされたことで宣言解除に至ったのだと思われます。

感染者が減少した要因は何なのでしょか?

いくつか考えられますが、まずなによりも外出自粛や感染予防措置など国民の協力があると思います。

次いでワクチンの接種率がようやく120%(対象者全員の2回接種で200%)を超えたことが大きい。

このことで、高齢者施設でのクラスターが着実に減りました。

むろん、減少は複合的な要因にあるとみられますが、どの要因が大きく寄与したのかは私にはわかりません。

専門家でもわからないと思います。

政府は宣言や重点措置の解除を受けて今後は対策を徐々に緩和することにしています。

ただし、感染の再拡大に警戒が必要だとして、緩和は段階的に行うとのことです。

例えば飲食店の酒類の提供について政府は、基本的対処方針のなかで宣言が解除された地域では酒の提供を認めたうえで営業時間は「自治体などから感染対策の認証を受けた飲食店は午後9時まで」、それ以外の飲食店は午後8時までの時間短縮を求めることを基本として知事が判断するとしています。

東京都では、都の認証を受けた店舗では酒の提供を午後8時まで認め、営業時間は午後9時までとし、利用は1グループ4人までに制限するとのこと。

一方、認証を受けていない店舗には酒の提供自粛と午後8時までの時短営業を求めることにしているようです。

また政府はプロ野球などのスポーツやイベントなどについて、ワクチンを接種した人や検査で陰性が確認された人を対象に観客の人数制限を緩和する実証実験を行い、感染を抑えながらイベントなどを開催する方法を検討することにしています。

同時に、対策の緩和といっても酒の提供や営業時間、あるいは客の人数などの緩和であるため、蜜にならないこと、十分な換気を行うこと、マスクを着用して大声は出さないこと等々、基本的な感染対策を徹底することは変わらずに重要だとしています。

今後、特に恐れなければならないことは、感染拡大が懸念される冬場を迎えることと、さらに感染力が強力になる変異株の出現です。

医療提供体制の強化には限界がありますので、どうしてもワクチン接種による集団免疫の獲得が必要になります。

少なくとも1回目のワクチン接種を先行した医療従事者や高齢者たちは3回目となるブースターショット(追加接種)が早急に求められます。

例えばファイザー社のコロナワクチンの効果は概ね5〜8ヶ月とされていますので。

ゆえに、ワクチン接種業務の責任主体である各地方自治体は3回目接種にむけ再び体制を整え直さねばなりません。

今度こそは「なかなか予約がとれない…」とか、「製造メーカの望んでいない配送方法でワクチンを運搬する…」とか、国民に危害と不安を与えることのないようにしてほしい。

コロナ禍で疲弊した経済の立て直しとともに、政府及び地方自治体の果たすべき役割は大きい。