きのう、ロシアでは、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う式典が行われました。
また式典では、プーチン大統領が「第2次世界大戦で軍国主義日本を敗北させた…」として日本にも言及した上で、「連合国の兵士や勇敢な中国の人たちなどのわれわれの共通の戦いへの貢献を高く評価する」と述べ、ソ連時代は仲の悪かった中国との歴史的な連携を強調しました。
軍国主義日本と言うけれど、終戦間際に日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、つまり日本を裏切って攻め込んできたのは日本以上に軍国主義だったソ連です。
ちなみに、そもそもあの時代、米国や英国を含め全ての列強は軍国主義だったろうに。
ソ連にしろ、ロシアにしろ、この国は平然と約束を破ります。
北清事変が終結した際にも、協定を破って北清からロシア軍を撤兵させず、むしろ満州にロシア軍を集中したことにより日露戦争が勃発しています。
誠に皮肉なのは、そのロシアが「NATOが約束を破った」と言ってウクライナ戦争をはじめたことです。
ソ連の解体で東欧諸国がソ連の軛から開放された際、ロシアの脅威はNATOが東方に拡大してくることでした。
ベルリンの壁崩壊で東ドイツが西ドイツに統合されたときも、統一ドイツがNATOに加盟するのかしないのかで大いに揉めました。
そこで当時、統一ドイツをNATOに加盟させる代わりに、米国のベーカー国務長官がソ連に示したのが例の「1インチ」発言です。
ベーカー国務長官はソ連に配慮し、ゴルバチョフ氏に次のように提案したという。
「もし我々がNATOの一部であるドイツに駐留を継続するのであれば、NATO軍の管轄は東へ1インチたりとも拡大しない」
このベーカー発言は公文書として遺っています。
しかしその後、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどの東欧諸国、そしてバルト三国のほか、バルカン半島の国々なども次々とNATOへ加盟し、NATO軍は東方へ拡大していったのです。
そこへ、これまで緩衝地帯だったウクライナまでもがNATO加盟を言い出したことで、ついにロシアはウクライナ侵攻に踏み切ったわけです。
ロシアにしてみれば「NATOは約束を破ったのだから侵攻はやむ得ず」となるわけですが、米国(NATO)側は「あの提案は仮定の話に過ぎず、約束を交わしたわけではない」と反論しています。
国際政治においては、約束が反故にされることはしばしばです。
ですが、世界には「世界警察」なるものが存在しない以上、約束反故が国際法違反として取り締まられることもありません。
ゆえに、自分の国は自分で守るだけの強い力を常に備えていなければならないのです。