川崎市麻生区に所在する麻生総合病院において、同院勤務の看護師が入院患者のクレジットカード情報を無断で撮影・不正使用し、インターネットを通じて約200万円を詐取したとして、警視庁により逮捕されるという重大な事件が発生しました。
報道によれば、被害者はすでに死亡されている80代の男性患者であり、本件は個人情報の不正取得にとどまらず、医療従事者による著しく悪質な背信行為です。
80歳という高齢で、かつ重篤であった可能性のある患者が、なぜクレジットカードを病室に所持していたのか、またパスワード入力なしに多額の不正利用が可能であったのか等々、不安や疑念を抱く市民はけっして少なくないでしょう。
医療機関においては、患者の生命・身体のみならず、尊厳や私的情報の保護にも高度な倫理性と管理体制が求められます。
本事案は、医療機関の情報管理体制、ガバナンス、及びコンプライアンスの脆弱性を如実に示すものであり、市民の医療機関に対する信頼を著しく損なう極めて深刻な事態です。
また、麻生総合病院の公式サイトによれば、同院では入院費の支払い方法として「現金またはクレジットカード一括払い」が明記されており、厚生労働省の医療機関情報にも「保証金制度」の記載があることから、患者のクレジットカード情報が医療機関側で一定程度管理されていた可能性は否定できません。
なお、本件の性質上、医療機関内部の管理体制に不備があった場合には、その不備の発覚を免れようとする組織的な隠蔽や改ざん等が行われるおそれも排除できないことから、関係資料の早期確保および関係職員への速やかな聞き取りを含む実効性のある対応が求められるところです。
そこで私は、令和7年7月7日付けで川崎市健康福祉局長に対し、医療法第25条および第6条の8に基づき、当該病院への立入検査や関係資料の確保、関係職員への聞き取りなど、実効性ある監督措置を早急に講じていただくよう要望しました。
その後、8月28日付けで当局より「立入検査」を行う旨の回答を頂きましたので、10月3日の川崎市議会において私は検査報告について質問したところです。
ところが健康福祉局長の答弁は、到底納得できるものではありませんでした。
臨時に行うべき立入検査を、あえて「定期検査」の枠内で処理し、検査結果についても、情報公開条例の8条を根拠に「法人(麻生総合病院)の利益を害するおそれがあるから検査結果を公表しない」と答弁したのです。
しかしながら情報公開条例は、当該医療法人が公開することを承諾すれば「公開は可能」としています。
つまり、情報公開条例15条の第三者意見手続きを通じ、当局は立入検査の結果報告の可否を法人に確認することができるのです。
私が法人への可否確認の有無を質問したところ、健康福祉局長は確認すらしていないと答弁しました。
市民が最も知りたいのはただ一点、「当該病院の個人情報管理に欠陥があったのか否か」です。
欠陥がなければ「なかった」と明言すべきですし、欠陥があったのならば「こう改善させた」と説明すべきです。
そのコミットメントを示すことこそ、監督官庁としての川崎市の責務です。
にもかかわらず川崎市健康福祉局は公開可否の確認もとらず、看護師逮捕という「突発的かつ重大な事件」を、あえて定期検査の枠内で処理したわけですから、市民全体の医療安全よりも、一医療法人の利益を優先したと言わざるを得ません。
あまりにも庇い立てが過ぎると、川崎市健康福祉局自らにもあらぬ疑念が生じます。
市民の知る権利を軽視し、一法人の利益を優先するような姿勢は断じて許されません。
医療安全と市民の信頼を守るため、私は今後も徹底して追及してまいります。