近年、川崎市の投資的経費は増加しています。
しかし、この増加をもって「積極投資」と評価するのは適切ではありません。
むしろ見えてくるのは、後追い投資という構造です。
本市の投資増加は、成長を先導する投資ではなく、需要に追いつくための投資として現れています。
後追い投資とは、需要が顕在化してから実施される投資です。
人口増加に対して都市基盤整備が後手に回り、需要の顕在化後に事業化が集中します。
学校不足、駅前広場不足、道路混雑、防災機能不足といった課題は、需要が先に生まれ、その後に整備が始まります。
投資的経費が増えますが、それは都市の競争力を高める先行投資ではなく、課題対応のためのキャッチアップにすぎず、その結果として投資額の“山”が生じています。
これは財政規模の問題ではなく、都市形成の歴史的構造の問題でもあります。
川崎市は昭和46年から30年間にわたり、都市計画ゼロのいわゆる革新市政が続きました。
その後、平成15年に阿部孝夫市政が誕生して革新市政に終止符が打たれ、本格的な都市計画が始まったと位置づけられます。
その事業化が、現在の福田市政のもとでようやく具体化し始め、そこに新庁舎建設などの大型投資が重なったため、近年の投資的経費の増大となっているものと考えます。
一方、都市の変化は、利用状況に現れます。
とりわけ、拠点駅の乗降客の動きは、都市の需要と期待を映す指標です。
もし主要拠点の利用が弱まる兆しがあるとすれば、それは単なる交通データの変化ではなく、都市の将来に対する期待の変化を示唆している可能性があります。
都市は人口の総量によって選ばれるのではなく、将来性への期待によって選ばれます。
川崎市の生産年齢人口(15〜64歳人口)は既に昨年にピークを迎え、今年から毎年減少し続けます。
総人口も2035年の160万人をピークに減少に転じます。
これを受け、議会など市政関係者の中には「先々、人口が減少するのだから、これ以上の大型投資は不要だ」という意見が少なからずあります。
人口減少期に最も危険なのは、投資を減らす行為です。
むしろ人口が減少するからこそ、投資によって生産性を高め、市内経済を持続的に成長させる必要があります。
成長の否定は、都市の発展可能性を自ら閉ざす行為です。
また、川崎市の人口問題は、減少だけでなく、高齢化のスピードが特に早いことです。
とりわけ、本市の中原区以北では、2020年から2050年の30年間で、75歳人口が約2倍に増加します。
この人口構造の急激な変化が、行政と生活圏の需要構造に急激な変化をもたらします。
需要の縮小や変化が顕在化してから整備を始めても遅い。
福田市政は「選ばれる都市」を掲げていますが、成長期の後追いは不便の問題にとどまりますが、縮小期の後追いは「選ばれなくなる」問題へと直結します。
これは都市政策における本質的な転換点です。
今後必要なのは、後追い投資ではなく予見整備です。
拠点を明確にし、交通インフラと防災インフラを先行させ、生活圏単位で将来像を提示する。
行政が将来需要の方向性を示すことで、民間は投資判断を行うことができます。
公共投資とは単なる供給ではなく、将来への期待、すなわち予見を形成する政策です。
とくに駅前広場の整備は、その象徴的な取り組みです。
駅は都市の投資軸であり、駅前空間は都市の意思を示す場所です。
交通インフラはボトルネックを解消し、防災インフラは将来リスクを下げます。
さらに、生活圏ごとの人口構造や都市機能の見通しを示すことで、民間投資の予見が生まれます。
この組み合わせにより、都市は継続的に選ばれる状態を維持できます。
川崎市の投資額は増えています。
重要なのは投資額とタイミングです。
後追い投資を繰り返すのか、それとも予見に基づく投資へ転換するのか。
人口減少期における都市政策の核心はここにあります。
都市の将来は、需要に対応する都市ではなく、将来を見据えて先に基盤を整える都市が決めます。


