きのう石破総理は官邸での記者会見でコメの店頭価格について言及されました。
「平均価格が下がりはじめ着実に変化した。5キログラム3,920円になった」
そりゃぁ、災害や天候不順などの有事の際に必要な備蓄米を大量に放出しているのですから、それなりに下がりはじめてもらわなければ困ります。
備蓄米放出がどれほどの効果を発揮したのはわかりませんが、おそらくマーケットの世界というのは、おコメの実存量の多寡にかかわらず「これから値段が下がるかもしれない」という市場マインドが広まるだけで実際に下がりはじめるものなのでしょう。
つまり、備蓄米の大量放出が、市場に「値下がりがはじまった」という強いシグナルを送り、実際の在庫量以上に価格が下落する心理的な連鎖が起きていると考えられます。
値上がり期待で過剰にストックしていた連中が慌てて売りはじめるのでしょうから。
それにつけても、これから参議院選挙という次期に合わせて、ものの見事にちょうどいいタイミングで価格を下げてくるものです。
さすが敗戦利得者・選挙互助会政党としての歴史がちがう。
厳しいと言われた都議会議員選挙も意外や意外、自民党はそこそこに善戦していますので、石破総理としても「このままいけば、なんとか参議院選挙も乗り切れる…」と自信を抱かれたにちがいない。
世間は「米価が下がったのは小泉農相のおかげだ…」と思ってくれているし…
SNS上では与党に対する厳しい意見が多数を占めていても、実際に選挙に行く人たちの圧倒的多数の主たる情報源は既存メディアなのでしょうから、この壁をぶち破ることはなかなかに難しい。
さて、石破総理は「とりあえずは参議院選挙が終わるまではコメの価格が下がってくれればいい」と思われているのかもしれませんが、これからのわが国の食料安全保障という観点で考えますと、一刻もはやくコメの国内生産能力を引き上げる政策を打たなければなりません。
というか既に手遅れなのですが、それでもやらなければならない。
誠に厳しい現実ですが、既に日本のコメ農家には「5キロ=2,000円」でコメをつくれる力はありません。
コメ農家の平均年齢が70歳を超えている現実を直視し、農家に対し「価格補償」もしくは「所得補償」を行い後継者を育成するなど、市場化による破壊から農家を守らなければならないのに、小泉農相は「農協を解体しろ」などと全く的はずれな政策を打ち出している始末です。
すべての農家に対する価格補償や所得補償を前提として、その上で参入障壁を緩和して日本人(資本も日本人)による農業への新規参入を増やしていくことも必要でしょう。
それを行うのに、わざわざ農協を解体する必要はありません。
そもそも昨今のコメ不足問題の根源は、食料自給率を低下させ農業を疲弊させた「減反政策」にあり、しかも、備蓄米を劣化しやすい玄米としていることに大きな問題があります。
そこで私は、減反政策を改めることはもちろんのこと、戦国時代から続いた「籾米備蓄制度」を復活させることを提案したい。
例えば、コメの増産と政府による全てのコメの買取制度により、流通精米と備蓄籾米とを区別して、流通精米の供給量を調整し需給を安定させつつ、籾米備蓄を確保する。
籾米は脱穀、精米して食料になるとともに、食料生産のための種籾にもなります。
このような主食はコメだけで、麦、トウモロコシ、ジャガイモなどの主食とは一線を画します。
籾殻を取り除いて「玄米」にするわけですが、玄米食が栄養バランスに優れていることは言うに及ばず、脱穀、精米後の籾殻や糠についても、肥料、飼料、敷料、マルチング材、燃料のほか、くん炭、活性炭など土壌改良材としても利用できます。