自由貿易真理教

自由貿易真理教

きのう、石破総理は日本経済新聞社が主催する国際会議で講演しました。

その内容をネット記事で読みましたが、私には怒りしか湧いてこない。

講演のなかで総理は次のように述べています。

「世界で保護主義内向き志向が強まる今こそ成長センターであるアジア各国が手を携え、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の重要性を世界に示すべきである」

その上で、「日本がアジアとヨーロッパの架け橋となり、TPP(自由貿易協定)の枠組みの拡大に取り組んでいきたい」と。

よくいる世間知らずの世襲議員らしく、相変わらず「現実」が見えてない。

なぜ今、世界で保護主義志向が強まっているのか、その理由を一度でも真面目に考えたことがあるのでしょうか。

ここ数年、世界で保護主義志向が強まっているのは、四半世紀以上にわたるグローバリゼーションや自由貿易によってもたらされた不均衡や矛盾、いわゆるグローバル・インバランスが顕著に現れ、それを国内経済の立て直しによって是正するためです。

そもそも「自由貿易」なるものは、経済規模や競争力が大きい国が一方的に利益を獲得する重商主義システムです。

そこに、モノ・ヒト・カネの国境を越えた自由を最大化させるグローバリズムが加わった結果、とりわけ先進国の中間層が大いに割りを食って負け組に追いやられてしまったのです。

保護主義を進めるトランプ米大統領を支持している人たちの多くは、そうした人たちです。

日本とて例外ではありません。

グローバリゼーションを推し進めてきた結果、日本国民はデフレという暗闇経済に25年以上も押し込まれ、中間層が破壊されてしまいました。

中間層の破壊は、少子化の要因でもあります。

しかも、デフレの更に恐ろしいところは国内の供給能力をも破壊することです。

値段を下げなければモノやサービスが売れない、という経済情勢が長きにわたれば、やがて事業者たちは閉業せざるを得ません。

昨今のわが国におけるインフレは、コロナ後の輸入物価高騰等によるコストプッシュ・インフレのみならず、明らかに供給能力不足によるサプライロス・インフレがはじまっています。

なにより自民党政権が愚かだったのは、自由貿易を叫びつつ、コメ農家に対しては減反政策を行ってきたことです。

所得補償や価格補償もないままに減反政策を進めれば、コメ農家の生産能力が縮小して当然です。

現在のコメ不足問題の根源はここにあります。

石破総理は「アジアの成長を取り込むためには、TPPへの参加は不可欠だ」と言っていますが、話は全くの逆です。

TPPを進めてしまえば、他国よりも政府による保護政策の乏しい日本の農業生産体制は益々破壊されることになります。

日本の政治家たちには「自由貿易は善、保護貿易は悪」という宗教的観念を一刻もはやく捨ててほしい。