日本の政府、企業、家計が海外に保有する資産から負債を差し引いた対外純資産が、2024年末時点で533兆500億円となり過去最高を記録しました。
対外純資産とは、その国が積み上げてきた経常収支の黒字残高でもあり国富の一つでもあります。
経常収支 = 貿易収支 + サービス収支 + 第一所得収支 + 第二所得収支
わが国の対外純資産が500兆円を超えるのは初めてで、前年比13%増となったのはむろん円安による影響も大きいのでしょう。
日本のメディアは「過去最高を記録したが、ついにドイツに抜かれ世界第2位になってしまった」と大げさに報道していますが、533兆円でも十分に他国を圧倒しています。
ただ、対外純資産が黒字であろうが赤字であろうが、実はあまり大勢に影響はありません。
例えば、超大国である米国は経常収支の赤字続きで「世界最大の対外純債務国」です。
その額は既に4,109兆円を超えていますが、それにより米国政府が明日にも破綻(デフォルト)するわけではありません。
重要なのは国内の実体経済(一人あたりのGDP)が着実に成長していくことです。
実体経済が着実に成長しているのであれば、経常収支が赤字であろうと、対外純債務が拡大しようが一向に構わない。
経常収支や対外純資産の黒字赤字は単なる結果にすぎず、どっちでもいい。
わが国の対外純資産が拡大し続けているのは、日本の政府、企業、家計が海外に持っている資産から上がる金利収入や配当金、すなわち「第一所得収支」が莫大だからです。
貿易収支やサービス収支が多少赤字であっても、それを余裕でカバーするほどに第一所得収支の黒字は大きく、全体(経常収支)の黒字を拡大させているわけです。
とはいえ、繰り返しになりますが、貿易収支の赤字が悪、経常収支の赤字が悪、という話ではないのでございます。
きのうのブログで、「トランプ政権が相互関税を仕掛けているのは、米国の経常収支の赤字を問題視しているからだ…」と書きましたが、既に述べたとおり本来は経常収支の赤字を問題視する必要はありません。
経常収支を世界最大の赤字にできるのは、むしろ米国の経済力(消費力)の強さの象徴だと思うのですが…
なお、トランプ大統領は「関税で得たカネを財源に減税をする!」とも言っていますが、これもまた何かの誤解かと思われます。
米国が日本からの輸入品に高い関税をかけた場合、そのおカネを負担するのは日本の企業でも国民でもなく、米国の国民です。
いわゆる「財政破綻論」もそうですが、今や「財政破綻論」が誤りであることは明らかにされているものの、現実の政治行政は「破綻する…」ことを前提に動いています。
それと同様に、国際政治もまた間違った前提によって動いていくものとして認識し、対処していかねばなりません。