実質賃金は何で決まるか

実質賃金は何で決まるか

去る3月27日の参議院予算委員会で、日銀の植田和男総裁が実質賃金について言及されていました。

実質賃金は、もっか22ヶ月連続でマイナスです。

なんと植田総裁は「実質賃金の伸び率はしだいにプラスに転換し、人々の生活実感も改善していく」という見解を示しています。

その根拠は、企業の賃上げに加え、輸入物価上昇の影響が薄らぐことで実質賃金がプラスに転換する、というもの。

植田総裁の言う「企業の賃上げ」とは、具体的には2024年の春季労使交渉の第2回回答の集計結果(平均賃上げ率5.25%)のことを指しているのだと思われます。

しかしながら、昨日のブログでも述べましたとおり、大手企業が賃上げしたからといって、そのまま実質賃金が上昇するわけでありません。

現に、2023春闘でも3.6%の賃上げが行われていますが、前述のとおり実質賃金は上昇するどころか下がり続けているわけです。

これも繰り返しになりますが、そもそも労働組合に加入している就業者は16%しかおらず、残りの84%の就業者にとって春闘は関係がないのでございます。

それに、日本の就業者の7割は中小企業で働いておられます。

ここが重要で、例えば大手企業の下請け、孫請け、曾孫受けを担う中小零細企業は、大手に価格を叩かれれば人件費を抑制せざるを得なくなります。

というか、現に中小零細企業は大手に「価格を叩かれ続けている…」からこそ実質賃金が上がっていないと言っても過言ではないのではないか。

そして植田総裁は、実質賃金が改善する理由として、春闘の賃上げのほかに「輸入物価上昇の影響が薄らぐ」ことを挙げています。

つまり、輸入物価が下がることで輸入される資材や部品や食品等の価格が下がるから「中小企業はその分、利益を確保できるでしょ…」とでも言いたいのかもしれませんが、ご承知のとおり、いずれの分野でも人手不足が深刻化していますので、中小零細企業にとっては取引先が単価を少しでも上げてくれないと十分な利益と人件費を確保できない状況にあります。

そもそも植田総裁は、実質賃金を決定する経済要素を正確に理解されておられるのでしょうか。

実質賃金を決定するのは、その企業の内的要因である①生産性、②労働分配率、そして外的要因である③消費税、④輸入物価の4つです。

とりわけ、もっとも重要なのが①の生産性ですが、これは売上個数が増えれば自ずと上昇します。

昨年まで、おにぎりを100個売っていた企業が「ことしは120個売りました…」となりますと、実質賃金は着実に1.2倍に上がります。(労働分配率、就業者数、消費税、輸入物価が変わらなければ)

では、売上個数が増える経済状況とはどんな状況でしょうか。

むろん、デフレが払拭されて、デマンドプル型のインフレに移行したときです。

そのためには金融緩和政策だけでは不可能で、なにより政府の財政支出の拡大(新規国債の増発=需要創造)が必要になります。

だからこそ、政府(財務省)が緊縮財政の姿勢を崩していないにもかかわらず、なぜ植田日銀がマイナス金利からゼロ金利に政策金利を引き上げたのかの理由がよくわかりません。

少なくとも、現実に実質賃金が上昇しはじめてから金利引き上げを行うべきではなかったか。