イギリスの新規感染者の9割超がデルタ株

イギリスの新規感染者の9割超がデルタ株

イギリスでは再び新型コロナウイルスの感染が拡大しています。

1日の感染者数は平均7000人に上り、倍加時間は約1週間とのことです。

感染を拡大させているウイルスは、いわゆるデルタ株(インド型)です。

現在、イギリスの新規感染者の9割超がデルタ株とのことです。

しかしながら、ファイザー社のワクチンを2回接種した場合、80%以上の確率で変異株にも対応できるという海外での治験データもあります。

なのにどうして、ワクチン接種率の高いイギリスでデルタ株の感染が拡大しているのでしょうか?

ここにも何やら政治的な背景がありそうです。

まず、時系列でデルタ株の問題を整理してみましょう。

インドで新しい変異株が検知されたのは昨年10月のことです。

それから6ヶ月後の4月、上のグラフのとおりインドでの感染者数が急増していきました。

このとき既にいくつかの変異株の存在が懸念されていました。

そのうちの一つが、「B.1.617.2系統」と呼ばれるデルタ株です。

このデルタ株が国際的にも注目を集め、4月4日にはWHO(世界保健機構)が「注目すべき変異株」に指定しました。

イギリスのボリス・ジョンソン首相は4月9日、最も厳しい渡航制限の対象国である「レッドリスト対象国」を増やしたのですが、追加で対象とされたのは、フィリピン、パキスタン、ケニア、バングラデシュです。

なお、その注釈として「この追加規制は南アフリカやブラジルで最初に特定されたような新変異株がイングランドに入るリスクを減らすための一助になる」とありますが、不思議にもレッドリストの追加対象国にインドは入っておらず、デルタ株への言及もありませんでした。

当然のことながら「なぜ?」という疑問が湧いてきます。

ここで政治が関係してきます。

ジョンソン英首相は4月末に予定していたインド訪問を中止したくなかったからではないか…と言われています。

例えば英国紙のサンデー・タイムズは次のように報じています。

「ブレグジット後の重要な通商交渉を前にジョンソン氏はインド関係に波風を立てたくなかったらしい…」と。

むろん、ジョンソン政権はそのような指摘を受け入れてはいませんけれど。

このころ、イギリス国内の著名な公衆衛生研究者からの「インドをレッドリストに加えないのは正気の沙汰ではない」という厳しい指摘があったにもかかわらず、それでもジョンソン政権がインドを対象国としなかったあたり、やはり対象国にしたくない政治的な何らかの理由があったのではないかと推察します。

先ごろ辞任したハンコック保健相は5月の時点で「パキスタンとバングラデシュをレッドリストに加えたとき、両国から訪れる人の陽性率はインドからの入国者の3倍だった(だからインドをリストに入れなかった)」と弁明されていますが実態は異なります。

NHS(英国保健省の公的医療制度)の検査追跡によると、3月25日から4月7日にかけてイギリスを訪れた外国人の陽性率は、パキスタンが6.2%、バングラデシュが3.7%であったのに対してインドは5.1%でした。

即ち、インドからの入国者の陽性率はバングラデシュよりも高く、パキスタンに近かったわけです。

仮に百歩譲ってハンコック保健相の主張が正しかったとしても、4月半ばには人口の違いを差し引いてもインドの1日の新規感染者数はバングラデシュやパキスタンをはるかに上回っていましたし、当時のジョンソン政権は既にケント株や南アフリカ株やブラジル株と呼ばれる変異株の感染がインドで拡大し深刻化していることを確実に認識していたのですから、やはりリストの対象にすべきだったと思います。

ジョンソン政権が事態の深刻さを重くみてインドをレッドリストの対象国にしたのは4月23日です。

ところが国際的にみると、英国の4月23日は決して遅いとは言えません。

インドからの入国制限を強化した国々をみますと、例えば米国は5月4日、フランスは4月24日、UAEは4月22日です。

WHOによると、デルタ株は既に世界60以上の国々に入っているらしいのですが、なのにイギリスだけがデルタ株による感染拡大に苦しんでいます。

どうやらそこにはタイミングの問題があったようです。

専門家によると、いかに感染力の高い変異株でも、1件だけならそのまましぼんで消え、大きな感染拡大に至らない可能性が高いらしい。

それが100件や500件、あるいは1000件と入ってくる場合、そのいくつかがやがて大規模な感染拡大の種になるを避けるのは非常に困難なことなのだとか。

なるほど、前述のサンデー・タイムズによると、4月のはじめから第三週までの間にインドから約2万人がイギリスに入国したと推計しています。

だとすれば、次のような仮説が考えられます。

ジョンソン政権がインドをレッドリストの対象に加えたのは4月23日です。

残念ながら、4月初旬から23日までの間には未だイギリス国内ではワクチンによる集団免役が確立されていなかった。

最悪にもその時期に、デルタ株が猛威を振るうインドから、なんと2万人もがイギリスに入国してしまった。

そのように考えますと、むしろイギリスとインドの関係性(かつての宗主国と植民地)から言っても、もっとはやい時期にレッドリスト対象国にしておくべきではなかったか!

そういえば、我が国でのワクチンの承認と接種が他の先進諸国に比べて最も遅くなってしまったのもまた政治の責任です。

政治とは無関心ではいられても無関係ではいられない。

そのことは万国共通です。