資源獲得競争と月

資源獲得競争と月

人類が初めて月に到達したのは1969年7月のことですので、あれからもう55年ちかくになります。

いま再び、先進国は月への有人月面着陸を計画し実行しようとしているのをご存知でしょうか。

人類の生命進化の過程は「居住領域の拡張」にありますが、新たな居住領域を手に入れるためには必ず次の3つの段階を経てきました。

第一段階としては、まず探検隊が新大陸に上陸して旗を立て、新しく発見した土地がどれほどの広さなのか、どんな形なのかなどを把握するために測量を行い地図をつくります。

第二段階は、小規模な派遣団を送り込み前哨基地を建設します。

前哨基地では、より詳しく未開の土地を調査し、発見した新たな資源をどのように手に入れ自国に送るかを研究します。

そして第三段階は、前哨基地の運用が安定した段階で大量の人員を派遣し、自国からの物資に頼ることなく現地で食料や建築資材を調達して生活圏と経済圏を構築します。

こうして新たに手に入れた土地に労働者が移り住み、子供が生まれ経済活動が安定することになります。

新たなエリアで新たな資源が手に入り、これが自国に大きな利益をもたらします。

歴史をみても明らかなように、コロンブスがアメリカ大陸を発見したときなど例外なくこの順序を辿っています。

新大陸、新領土を発見し、その土地の資源を利用して国は成長を続けてきたのでございます。

むろん、月面基地もこの原則に従います。

1961年、米国は月に旗を立てるためにアポロ計画を立案し、ロシアと熾烈な宇宙開発競争をくりひろげ、8年後の1969年、ついに月に降り立ち第一段階へ入ったわけです。

ところが、月を調査したところ、そこには細かい粉末の砂があるだけで不毛の大地だったため、それ以来、人類は二度と足を踏み入れることなく、月に立てられた米国の旗はずっと放置され続けてきました。

しかしながら、ここ最近、経済大国は再び月を目指しています。

これまでロシア(旧ソ連)、米国、中国、インドの4カ国は無人探査機を月面に送り込むことに成功していますが、とくに米中の2カ国はすでに前哨基地を建設する第二段階に入ろうとしています。

彼らが月で手にしようとしている最大の資源は、月面の砂に高濃度に含まれる「ヘリウム3」かと思われます。

海水(重水素)とヘリウム3さえあれば、永遠のエネルギー技術を手に入れることが可能になります。

永遠のエネルギー技術とは、核融合(人工の太陽)です。

核融合がもたらすエネルギーは従来の発電とは比較にならないほど莫大であり、核分裂技術の原発よりも安全性が数段に高いと言われています。

もしも核融合発電が具現化すれば、この世のエネルギー問題が全て解決するほどの革命的な技術です。

月に求めるもう一つのエネルギーは、水です。

近年、月に水が存在する可能性があることがわかってきました。

NASAが公開した月面(南極)の画像に青い部分(クレーターの底など)があるのですが、太陽の光がまったく届かないところに氷の状態で存在していると考えられています。

水は飲料水になるほか、水素を取り出せばロケットの燃料にもなります。

現在、地球から月まで1リットルの水を運ぶのに1億円かかるとされていますので、現地調達できれば大幅なコスト削減ができるわけです。

ヘリウム3に加え、こうした水を巡る競争も激化しているわけですが、現在の宇宙のルールでは月の資源について明確な取り決めはなく、早く見つけた国が優先的に利用できることになっているらしい。

さて、昨年9月に種子島宇宙センターから打ち上げられた我が国(JAXA)の無人探査機(SLIM)が、1月20日の午前0時ごろに月面着陸に成功しました。

これで世界では5カ国目、日本では初になります。

月の重力は地球の6分の1で、大気が無いためにパラシュートでの減速ができないため、無人探査機での着陸を制御するには高い技術力が求められますが、今回の月面着陸はムーンスナイパーと言われる「ピンポイント着陸」を目指したとのことです。

ピンポイント着陸とは、着陸予定地点と着陸場所の誤差を、これまで各国の探査機のような数キロ単位より遥かに小さい100メートル範囲以内に縮めるというもので、今後の月面探査をリードするために必要な技術だそうです。

ところが誠に残念ながら、SLIMは想定通りの着陸姿勢がとれなかったために、搭載された太陽光電池パネルが発電できていないようです。

これでは、通信や探査に必要な電力を確保することができないという。

JAXAとしては、パネルとは別に搭載されているバッテリーによる残された電力によって、少しでも必要なデータを収集するとしています。

とりわけ「残された電力が限られている中で、ピンポイントでの着陸が達成できたかどうかのデータを優先的に確認したい」とのことです。

米中に遅れをとっている日本ですが、宇宙開発への投資は必ず新たな先端技術を生み出し、他の分野への経済的波及度も大きい。

例によって政府は緊縮財政を続けていますが、こうした宇宙開発への投資を惜しんではならない。