合成の誤謬

合成の誤謬

「〇〇アセットマネジメント・チーフストラテジスト」を名乗る、あるエコノミストが次のような警鐘を鳴らしています。

「日本の政府債務は1200兆円規模となり、GDPの約2倍に達した。一方、日銀の国債保有割合は2023年3月末時点で53.3%と過去最大の水準だ。財政状況の悪化や、日銀による事実上の国債引き受けに対しては、その弊害について指摘されてきた…」

要するに「財政状況が悪化するなか、これ以上の国債を発行していいのか…」と言って世に問うているわけです。

私に言わせれば…

政府債務はGDPの2倍ですけど、それで何か問題ありますか?

日銀の国債保有割合が50%を超えていますけど、それで何か問題がありますか?

…ということです。

はたしていったい、何に怯えているのでしょうか。

私たちが真に怯えねばならないのは財政状況などではなく、経済が成長しないこと、実質賃金が上昇しないことです。

これだけ日銀が国債を購入しているにもかかわらず、民間金融機関の貸し出しが増えない現実を見よ。

民間金融機関の貸し出しが増えない根本原因は、経済基調がデフレーションだからです。

どんなに日銀が国債を購入したところで、政府、企業(金融機関を除く)、家計、外国、いずれかの経済主体が負債を拡大し、支出しなければデフレを脱却することなどできません。

デフレ下で企業や家計がリスクを負うことはできませんので、詰まるところ政府の負債(財政出動)の規模が足らないのでございます。

デフレとともにコストプッシュ型のインフレまで同居しているのですから、なおさらに政府支出の拡大が求められるところです。

逆に言えば、いまほど政府の財政支出(国債発行)を拡大するにふさわしい時期はありません。

そもそも、多くの国民が誤解していますが、すべての経済主体が同時に黒字(資産)を増やすことはできません。

あらゆる経済主体が黒字をめざしたら、国民の所得の合計であるGDPが減少してしまいます。

その理由は、所得とは誰かが消費や投資として支出してくれないかぎり創出されないモノだからです。

すなわち、おカネの貸し借りを主要な業務とする銀行は別ですが、それ以外の経済主体、つまり政府、企業、家計、外国、の4者が同時に貯蓄することは物理的に不可能なのでございます。

いつも言うように、国民経済は「誰かの支出が、誰かの所得になる」というかたちで横につながっています。

我が国には、政府の支出拡大について「政府は無駄遣いするな…」と批判する人たちが多いわけですが、彼ら彼女らの言う「無駄」の定義が実に不明確です。

少なくとも言えることは、仮に「無駄」であってもその支出は、必ず誰かの所得になっています。

国民経済(実体経済)において国民の所得が増えるということは、経済成長(GDPが増えること)していることを意味しています。

みんなが支出を減らしたら、GDPは成長しない。

増税による財源確保とは、みんなが支出を減らす実に馬鹿げた行為です。

景気が悪いとき、個々の家計や企業が、それぞれに倹約をして支出を減らすことは正しい経済行為です。

しかし、政府までもがそれをやってはいけません。

これを「合成の誤謬」と言います。