税は財源にあらず

税は財源にあらず

経団連の十倉雅和会長が「増税議論を逃げるな…」と警鐘を鳴らしています。

例えば児童手当の所得制限撤廃などの方針を示した政府に対しても「財源確保については結論を年末に先送りし、消費増税の議論は早々に封印された」と慨嘆しています。

要するに十倉会長は「少子化対策や防衛力強化のために歳出が増えるのは仕方がないけど、ちゃんと増税(消費税率の引き上げ)をセットでやらないとダメでしょ」と言っているわけですが、残念ながら経済界の指導的立場にあられる経団連の会長といえども「貨幣とは何か」については実に門外漢なのがよくわかります。

こうした十倉会長のような考え方は、即ち「新たな支出のためには、あらたなおカネをどこから持ってきてストックしておかねばならない…」という考え方は、典型的な「貨幣のプール論」です。

貨幣のプール論とは、貨幣は物理的・量的な限界がある「モノ」であり、仮想上の貨幣のプールをつくることが可能、という理論です。

この理論を前提にして財政を論じようとすると、いつも言うところの「家計簿財政」になります。

しかしながら、通貨発行権を有する政府のやりくりと、それを有しない家計のやりくりが同じであるはずがない。

『現代貨幣理論』(以下、MMT)によって「貨幣」はモノではなく負債の一形式であることが既に証明されています。

MMTを持ち出すと、次のように批判する学者連中がいます。

「MMTは無限におカネを発行しても問題ないと言っている…」

こういうのを、ストローマン(藁人形)・プロパガンダと言います。

相手が言っていないことを、あたかも言っていることにしてそれを批判攻撃する、という極めて卑怯極まりないやり方です。

何度でも言いますが、MMTは無限におカネを発行しても問題ない、などと言っていません。

MMTは「自国通貨建てで国債を発行している政府がデフォルトすることはあり得ない」「政府の国債発行はインフレ率の制約を受けない限り拡大できる」と言っています。

また、貨幣のプール論に洗脳されている人たちは、次のようにも言います。

「政府が国債を発行すると、民間貯蓄を減らし金利を上昇させるため民間投資を抑制する…」と。

これまた全く事実に反するのですが、まず何よりも政府の国債発行は民間貯蓄を原資にしておりません。

2020年のコロナのなか、政府が国民一人に対して10万円の定額給付金を配った際、定額給付金に反対する人たちは「そんなもの配っても貯蓄に回るだけで、消費拡大効果はない」と言っていました。

定額給付金の財源は国債発行でしたが、そのとおり国民の貯蓄は増えました。

誰かが使った定額給付金は、必ず誰かの所得(貯蓄)になっていますので、国民貯蓄は必ず増えるのでございます。

つまり、政府支出の拡大が民間の貯蓄(所得)を増やすことが身近に証明されたわけです。

十倉会長におかれては、政府が自国通貨建てで発行する国債は、民間貯蓄の制約を受けず、将来世代へのつけまわしにもならないことを、どうぞご理解頂きたい。

そして、税は財源確保の手段ではないことも。