止まらぬコストプッシュ・インフレ

止まらぬコストプッシュ・インフレ

4月の消費者物価指数が、さらに上昇しました。

総合指数は2020年を100として105.1、前年同月比3.5%の上昇です。

次いで、日銀が指標としている生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は104.8で、前年同月比3.4%の上昇。

食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は101.5で前年同月比2.5%の上昇となり、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.0で前年同月比4.1%の上昇です。

さらに内訳をみますと、電気代やガソリンなどのエネルギーの価格は1年前と比べて下がっているものの、食料品が9%の上昇、食用油などの値上がりも続いているほか、豆腐やお菓子、卵なども大幅に上がっています。

食料品以外でも、エアコンや洗剤のほか、ここへきてサービスの分野でも値上がりが目立っています。(調査対象の83%の品目で価格が上昇)

因みに、帝国データバンクがまとめた調査によると、今月(6月)におよそ3,600品目が値上がりするとされています。

言うまでもなく、私たちの生活を直撃しているのが電気料金ですが、大手電力7社で6月の使用分から家庭向けの規制料金が値上げされます。

さらにサービスの分野、例えば映画鑑賞の料金、引越し・家事代行サービスの料金等でも一部値上げに踏み切る動きがでています。

おそらくは来月に入っても値上がりはおさまらないはずです。

なぜなら、政府が輸入した小麦を製粉会社などに売り渡す価格が4月に引き上げられたことを受け、それを使った家庭向けの小麦粉や食パンなどが7月になると確実に値上がりしますし、また、生乳の取引価格が引き上げられることを受け、牛乳やチーズの値上げに踏み切る企業もでてきているからです。

しかも、為替が再び輸入品の物価を押し上げる「円安」の方向に動いているなか、ガソリンの市場価格を抑制してきた政府の補助金が9月末でいったん終了することが決まっています。

岸田内閣は各自治体を通じて「住民税非課税世帯等に対し1世帯あたり3万円を給付する…」などの措置を講じますが、そんなもの焼け石に水です。

緊急かつ本格的な物価対策が求められるところですが、インフレには2種類あることを理解していない今の政府には期待し難い。

日銀が指標としているコアCPIが2%を超えていることをもって「既にデフレを脱した…」と言っているお〇〇さんもいますが、いいかげんに〇〇は休み休み言ってほしい。

いま、日本に襲いかかっているインフレは、むろんコストプッシュ・インフレです。

コストプッシュ・インフレの本質は、実物資源の供給制約にあります。

ウクライナ戦争や為替安により上昇したわけですが、だからと言って、戦争が終息し、あるいは為替が安定したところで、すぐに解決されるような話ではありません。

エネルギー資源に乏しく、食料自給力も低く、少子高齢化による労働力不足を抱える我が国においては、それらの供給制約を解消する施策が求められます。

エネルギー供給に制約があるのであれば、短期的には省エネの徹底、長期的にはエネルギー資源の開発が必要でしょうし、食料供給に制約があるのであれば、短期的にはフード・サプライチェーンの効率化、長期的には食料生産の拡大が必要でしょう。

そして、少子高齢化に伴って労働供給に制約が生じるのであれば、労働者の技能の向上、あるいは機械化や自動化による生産性の向上が必要となります。

むろん、その社会基盤として、交通、通信、電力などのインフラ整備も必要です。

要するに、政府による長期的視点にたった「産業政策」が求められているのでございます。

少なくとも、「戦争と為替安が終わればそれでいい…」という話ではありません。