製造業を再び国内に!

製造業を再び国内に!

中国は1980年代からの経済開放政策により、世界の製造工場としての発展を目指し、2001年にはWTOに加盟して急成長を遂げました。

とりわけ、グローバリゼーションの恩恵を直接的に受けたこともあって、メイドインチャイナの製品が世界中に集荷され、安い労働力を武器に世界各国のメーカーの誘致に成功してきたのは周知のとおりです。

例えば今日、スマホなど私たちの日常生活に欠かすことのできないApple製品ですが、Apple製品の製造現場が、中国に大きく依存してきたのはよく知られています。

お馴染みのiPhoneについては、台湾のEMS大手、鴻海(ホンハイ)精密工場が組立業務を受託し世界シェアで約70%を保持していますが、鴻海はiPhoneの大半を中国・鄭州工場で製造しています。

しかし近年では、米中貿易戦争が勃発するなど経済的関係は悪化しており、中国に拠点を構えること自体のリスク、いわゆる「チャイナ・リスク」が指摘され、脱中国が一つの潮流となっています。

Appleもまた、脱中国の方針を示しています。

Appleが生産拠点の一部を中国以外の国に移す計画を「加速させている…」というニュースは既に広く知られているところですが、ウォールストリートジャーナルによりますと、移転先としてインドやベトナムなど、アジア諸国が有力候補になっているとのことです。

ロイターが分析したところ、2019年までの5年間、製品の全世界における製造拠点のうち、中国が占める割合は44〜47%とされています。

ところが、この比率は2020年に41%に下がり、2021年には36%と4割を切りました。

Appleとしては、高まりすぎた中国の比率を「徐々に下げていきたい…」と考えているようで、新たな生産拠点へウエイトを移しつつあるようです。

例えば、ベトナムの工場にAirPods・Apple Watch、インドの工場にiPhone製造の45%を移管させようとしています。

因みに、Appleによる中国脱却は、はやい段階から考えられていたようです。

Appleは2010年代から、各市場で販売する製品は、その地域の製造拠点での「地産地消化」に努めてきました。

現在、米国、EU、中国がAppleの大きな市場で、製造拠点もこの3地域に集中しているのですが、米国とEUに関しては製造拠点が多くないため、不足分を中国から供給するという構図になっています。

とはいえ、前述のとおり、ここ最近はこの脱中国の動きが加速しています。

一般的には、その理由としてコロナ禍によるサプライチェーンの混乱が挙げられていますが、私はそれよりも「グローバリゼーション」の終焉のほうが大きい理由だと思います。

法人税の安い国に本社を構え、労働コストの安い地域で製品を製造し、それをより高く売れる市場でさばく。

それが実現できるのは、地政学的な安定のもとに、国境を越えたヒト・モノ・カネの移動の自由が保障されている状態、即ちグローバリゼーションが成立していることが大前提です。

しかしながら、グローバリゼーションを支えてきた覇権国・米国の力が相対的に退潮したことにより、世界は再び地政学的に不安定な状態に移行しつつあります。

これではグローバリゼーションを維持することは不可能です。

こうしたなかAppleは、中国から撤退し、ベトナムやインドの工場にiPhone製造の45%を移管させようとしているようですが、こうした措置もまた、未だにグローバリゼーションを前提としたものではないでしょうか。

グローバル資本であるがゆえに、グローバリズムを捨てきれないのか…

我が国では、長引くデフレと構造改革により実質賃金が低迷していますが、この際、これを逆手にとりつつ、昨今の「円安」をも活かして、再び製造業を国内に戻してみてはどうか。

グローバリゼーションが終焉した今、できるだけ国内で完結できる経済を目指すべきです。