新自由主義が少子化問題を悪化させた!?

新自由主義が少子化問題を悪化させた!?

合計特殊出生率とは、15歳から49歳までの全女性の年齢別出生率を合計したもので、要するに一人の女性が一生の間に生む子どもの数を示す指標です。

1989年の合計特殊出生率が、特殊要因といわれた「ひのえうま(1966年)」の合計特殊出生率1.58(統計史上過去最低)を下回る1.57となったため、ここから我が国の少子化問題がはじまりました。

いわゆる「1.57ショック」です。

ショックを受けた政府は事態を憂い、1994年には我が国初の少子化対策となる「エンゼルプラン」を策定しました。

「育児休業給付」が創設されたのもその翌年のことで、以来、我が国では「少子化対策」なるものが打ち出されつつも、これといって何一つ効果を発揮したものはありません。

2020年の合計特殊出生率は1.33です。

いまなお、少子化に歯止めがかかっていないことがそれを証明しています。

なぜ、歯止めがかからないのか?

むろん、少子化対策としての「処方箋」が間違っているからでしょう。

少子化対策というと、たいていの場合、各種手当は保育所整備などの子育て支援策が講じられますが、それらはあくまでも子育て支援策であって少子化対策ではない。

子育て支援、大いに結構です。

どんどんやったらいい。

それとは別に、少子化対策が必要であるということです。

少子化問題を取り上げる人たちの多くが根本的に間違っているのは「子育て支援策 = 少子化対策」と考えていることです。

おそらく彼ら彼女らは「子どもを生むと経済的に大変だから少子化が進んでいるのだ」と分析しているのでしょう。

だから「子どもを生んでも育て易いように、手当や休日を取得しやすくすればいい…」という処方箋しかでてこない。

異次元なのかどうか知りませんが、岸田内閣の少子化対策もまた同じ轍を踏んでいるようにしか思えません。

さて、実は有配偶女性(結婚された女性)の出生率を時系列でみますと、1.57ショックの1990年までは下がり続けていたのですが、ショック後の1990年以降は下げ止まっており、むしろ回復基調にあります。

これはどういうことでしょうか。

有配偶女性の出生率が下げ止まり、むしろ回復しているにもかかわらず少子化が進んでいる理由は、婚姻率の低下が関係しているのではないでしょうか。

だとすれば、少子化は「非婚化」によってもたらされているという仮説が成立します。

では、非婚化の要因はどこにあるのでしょうか。

突き詰めていくと、一つにデフレ経済による実質賃金の減少があり、二つには雇用環境の悪化があります。

例えば、正規職員と非正規職員の婚姻率をみますと、前者が約6割であるのに対し、後者が約2割となっています。

つまり、結婚できるほどに所得がある人たちは子どもを生むことができるのですが、非正規など雇用が不安定な低所得者は子どもを生むどころか結婚することさえ難しい、という世の中になってしまったということです。

ということは、1990年代から進められた新自由主義に基づく構造改革や緊縮財政こそが、我が国の少子化を悪化させた主因と言えるのではないでしょうか。