金庫は空っぽでも通貨は…

金庫は空っぽでも通貨は…

財政破綻論者の代表格であられる土居丈朗(慶應義塾大学 経済学部教授)先生が、またまた頓痴気な理論を展開しています。

氏によると「防衛増税をすれば、防衛費に対する国民のチェックが厳しくなる…」らしく、だから防衛増税が必要なのだそうです。

ひどく国民をバカにした物言いですね。

要するに「自分は常に防衛のことを考えているけど、国民は税金でもとらなければ真剣に防衛のことなど考えないのだ…」と、いかにも言いたげです。

国防について、そんなに立派な持論をお持ちであるなら、ぜひ一度拝聴してみたいものです。

税収は財源ではない、という基礎的知識すら乏しい経済学者の「国防論」とはいったいどのようなものなのか実に興味がわきます。

財政破綻によって日本が滅びる可能性はゼロ%ですが、先の大戦(敗戦)と同様に、政府中枢にいるエリートたちの劣化によって国を危うくすることは充分にあり得ます。

帝国陸海軍の中枢にいたエリート高官たちが、本当のエリートでいてくれたならば、あのような敗戦はなかったはずです。

ご承知のとおり、土居丈朗先生は財務相の諮問機関である『財政制度等審議会』の委員をつとめ、公式な立場でわが国の財政について平然と間違った見解を述べています。

前の財務省事務次官(事務次官は省内官僚の最高位)、矢野康治氏もそうでした。

氏は、2020年に行われた政府の現金給付措置を公然と「バラマキ」と批判し、「やむにやまれぬ大和魂…」によって自らの無知をさらけ出して憚らなかった。

土居氏や矢野氏ら健全財政派の共通点は「国庫には無尽蔵におカネがあるわけではない…」と主張することです。

おそらく彼らは、政府は課税によって国民からおカネを徴収して国庫に積み上げ、それを出してきて支出しているものと誤解しているのです。

しかしながら、現実は違います。

日本政府は税収を金庫に貯め込んでなどおらず、単にコンピューターのキーボードを叩いて、何もないところから「円」という通貨を創造し支出しています。

ゆえに政府は、例え金庫が空っぽでもおカネを無尽蔵に生み出すことができるのでございます。

むろん、インフレ率(生産力)が許す限りにおいて。

なお、彼らの思考が不思議なのは、「バラマキではなく、真に必要なものであれば財政支出を拡大しても構わない…」と言うことです。

それでいて、「破綻」とは何か、「バラマキ」とは何か、「真に必要なもの」とは何か、それぞれの定義を明確にしないわけですが、そもそも論として、本当に日本政府が破綻する危機に直面しているのであれば、例え「真に必要なもの」であっても財政支出などできないはずです。

彼らは「今はコロナ禍だから、財政支出を拡大しても仕方がない…」と言いますが、普段から財政破綻の懸念がある政府が、どうしてコロナ禍だと急に破綻しなくなるのか説明してほしい。

結局、真に必要なものであっても支出したくないのが彼ら健全財政派の本音なのでしょう。

財政支出の拡大と言えば条件反射的に「バラマキ」呼ばわりするような姿勢は、真のエリートの姿勢ではありません。