「国債発行は将来世代へのツケまわし…」は嘘

「国債発行は将来世代へのツケまわし…」は嘘

1カ月ほど前に決定した『国家安全保障戦略』に「経済・金融・財政の基盤の強化に不断に取り組む」という一文が加えられたことに違和感を抱いたのは私だけではないと思います。

国家安全保障戦略など国防の基本方針で「財政基盤の強化」が謳われたのは戦後はじめてのことです。

いかにも「例え安全保障政策に必要な整備や計画であっても、財政制約を受けるんですよ…」と言いたげです。

防衛省が所管する国防計画に、財務省の緊縮財政至上主義をもちこむのはいかがなものか。

相変わらず日本経済新聞は「国防が問う国債発行余力」などという愚劣記事を書いていますが、この新聞社は根本的に間違えています。

彼らは、国債が民間部門の貯蓄によって賄われていると誤解しています。

「国債は民間部門の資金によって賄われているのだから、政府は将来の税収によって債務を民間部門に返済しなければならない」と思い込んでいるわけです。

だから事あるごとに政府債務残高の対GDP比率を持ち出して、「日本は破綻するぅ〜」とやる。

昨日も、国債金利がわずかに上昇しただけで鬼の首をとったように騒ぎ立てています。

日本経済新聞といいながら、実は経済や貨幣について理解していない新聞社なので仕方のないところではありますが、歴然たる事実として政府の財政赤字は民間貯蓄によってファイナンスされていません。

では、何が政府財政の赤字をファイナスしているのかと言うと、日銀(中央銀行)が創造した通貨(準備預金)です。

民間銀行は国民から集めた預金で国債を購入しているわけではなく、民間銀行が日銀にもっている準備預金(日銀当座預金)で国債を購入しています。

むろん、準備預金は国民や企業から集めた預金ではありません。

中央銀行たる日銀が創造したものです。

中央銀行が通貨を創造できるのであれば、政府が債務を返済できなくなることなどあり得ない。

したがって、政府債務残高の対GDP比率という指標には何の意味もなく、こんなものに一喜一憂する必要もない。

もっとも、中央銀行が創造できるのは自国通貨(日本では円)に限られますので、外貨建ての対外債務に関しては、政府が返済不能に陥る可能性はあります。

即ち、外貨建ての対外債務に関しては、たしかに持続可能性の指標として対GDP債務との比較が必要かもしれません。

しかしながら、日本、米国、英国では、自国通貨建てで国債が発行されています。

ゆえに、これらの国々がデフォルト(債務不履行)に陥ることはあり得ないのでございます。

一方、ギリシャ、イタリア、フランス、ドイツなど、欧州中央銀行が発行するユーロを採用している国々は自国通貨の発行を放棄していますのでデフォルトのリスクがあります。

政府債務残高対GDP比率が日本よりもはるかに小さかったギリシャ政府がデフォルトしたのはそのためです。

何度でも言います。

財政赤字をファイナスしているのは民間貯蓄ではない!

「国債発行は将来世代へのツケまわし…」は嘘です。