米国様の助言に忠実に従った不良債権処理(後編)

米国様の助言に忠実に従った不良債権処理(後編)

昨日の続きになります。

不良債権を短期間でハードに処理すれば、経済に大きなショックを与えるのは必至です。

よって、不良債権は経済への影響を最小限にするよう、時間をかけ緩やかに処理すべきものです。

ところが、森政権末期から小泉政権にかけてのころ、突然マスコミが「不良債権を早期に処理すべきだ」と騒ぎ出しました。

その背景には米国政府からの要請(圧力!?)があったことは昨日のブログでも述べたところです。

ではどうして米国は日本の不良債権を早期に処理することを望んだのでしょうか?

そのことは、ブッシュ大統領が小泉首相に宛てた『親書』を読むと解ります。

「銀行の不良債権や企業の不稼働資産が、早期に市場に売却されていないことに強い懸念を感じる」「最も効果的に資産を活用できる人たちの手に委ねて機能を回復させることが必要だ」と書かれているように、不良債権を早期に処理させ、時間をかければ再生の可能性のあった企業までを倒産に追い込み、それらを市場に安価で売り出させ、「最も効果的に資産を活用できる人たち」に入手させたかったということなのでしょう。

ここで言うところの「最も効果的に資産を運用できる人たち」とは、むろん外資のことにほかならない。

実は当時、所管大臣であった柳沢金融担当大臣は不良債権処理に手間取っていました。

おそらく米国政府も苛つきを隠せなかったと思います。

ところが、ちょうどそのとき柳沢大臣の失言があって氏は辞任に追い込まれています。

柳沢さんに変わって金融担当大臣に就任したのが竹中経済財政政策担当大臣で、ゆえに竹中先生は経済財政政策担当大臣と金融担当大臣を兼務することになり、ブッシュ大統領のご助言どおりに事をすすめたのでございます。

結果として、2001年度末に約43兆円あった我が国の不良債権は2004年度末には半分以下にまで減少していますので、たしかに早期の不良債権処理には成功したと言えるのでしょう。

とはいえ、それで日本経済が復活したわけではありません。

ブッシュ大統領のご助言(親書)には「迅速に行動すれば、市場や米国の友人、世界中の人々に対して日本が景気回復の道筋をたどろうとしているシグナルになる」と書かれています。

ご承知のとおり、不良債権は早期に処理されたにもかかわらず、あれから20年、我が国経済は一向にデフレを払拭できず、実質賃金は下がり続け、生産性向上のための投資の減少から国内供給能力は毀損されつづけ発展途上国化しています。

早期の不良債権処理は、たんにハゲタカ外資に日本の資産を二束三文で売り渡しただけだったのではないでしょうか。

それだけでなく、ハードな不良債権処理は日本の経済を悪化させ、外国企業のライバルとなり得る日本企業を停滞させる手助けをしただけではなかったのか。

企業の時価総額世界ランキングをみると、この30年で日本企業の名前を上位から消してしまったのは周知のとおりです。

不良債権の早期処理を迫られて傷ついたのは企業だけはなく、銀行も同様でした。

金融担当大臣となった竹中先生は不良債権処理により銀行をも追い込む策にでました。

それが、金融再生プログラム(通称「竹中プラン」)です。

竹中プランで、銀行の資産査定が厳格化されます。

即ち、普通に運営していた銀行でも、竹中プランの基準で査定されると、忽ち倒産寸前の銀行だと判断されてしまうわけです。

普通に運営している銀行に対し、わざわざ厳格な基準を急に持ち出して「破綻寸前」というレッテルを貼る。

とりわけ2003年に、この竹中プランで大きな被害を被ったのは「りそな銀行」と「足利銀行」でした。

りそな銀行は、査定基準を厳格化されたことで自己資本比率が国内基準の4%を割り込み2%台に転落してしまいました。

結果、公的資金2兆円が注入され実質国有化されたわけです。

足利銀行は破綻処理されています。

この2行と取引している多くの企業が甚大な被害を被ったことは想像に難くありません。

りそな銀行の実質国有化が、外資にもたらしたものは何だったのか。

ここからは推測です。

本当は、国有化した「りそな銀行」を、そのまま外資に安く売り渡したかったにちがいない。

ただ、そのやり方は、国有化した長銀をリップルウッドに安く売り飛ばした一件もあってとかく評判が悪い。

なので今回(りそな銀行)は、そのやり方はまずい。

そこで彼らは考えました。

まず、竹中プランの導入で「りそなが危ない…」とマスコミに騒がせる。

そして国会では、小泉首相や竹中大臣が「大銀行でも破綻はあり得る」と答弁して、りそな破綻の不安を煽りに煽ります。

当然、りそな銀行が破綻処理されると考えた株式市場の参加者たちは一斉にりそな株を売りに走ります。

ところが、りそな株がダダ下がったあと、急に竹中金融担当大臣は方針を転換し、りそな銀行に2兆円の公的資金を注入して救済すると発表します。

注入の発表を受けて、底をついていた「りそな株」は急騰します。

なるほど、一連の過程で株を売り抜けた人たちはだいぶ儲けたことでしょうね。

とりわけ、外資系ファンドが莫大な利益を得た、と聞いたことがあります。

竹中先生は彼らに絶賛された、とも。

この真相を追求していた学者さんがおられましたが、彼は別の事件で逮捕され表舞台から姿を消して久しい。

因みに、現在「りそなホールディングス」の株主で一番大きな比率を占めているのは外国人で、大株主にもJPモルガンなど外国企業が名を連ねています。

さて、きのうきょうと二日間にわたり、竹中先生の輝かしいご功績を紹介させて頂きました。

竹中先生は2000年代から日本の経済政策に関わられておられますが、日本経済は凋落する一方です。

その方が未だに政府の会議(デジタル田園都市国家構想)に有識者として名を連ねておられるのはどうしてなのでしょうか。