米国様の助言に忠実に従った不良債権処理(前編)

米国様の助言に忠実に従った不良債権処理(前編)

ロイターによれば、欧州では金利や物価の上昇が低所得層を中心に深刻な影響を及ぼしており、域内銀行の不良債権問題が今後急増する可能性があるとのことです。

不良債権…

不良債権とは、平たく言えば「貸したけど返ってこない(返済されない)おカネ」のことです。

この言葉を聞くと、どうしても真っ先に思い浮かんでくる名前が竹中なにがし先生です。

もしも銀行が不良債権を抱えてしまった場合、バランスシート(貸借対照表)上で何らかの処理をしなければなりません。

例えば銀行がA社に1億円を貸していたのだが、それが返ってこない可能性があるとします。

すると銀行は、自らのバランスシート上で、そのマイナスになりそうな1億円をどうにか処理しなければならないわけです。

その処理の方法は2種類に分かれます。

まず第一に、間接償却。

間接償却とは、実際の損失額をシミュレーションし、例えば5,000万円は返ってくると計算できるとすると、マイナス5,000万円をバランスシート上に計上して処理し、貸し先であるA社からは時間をかけて資金を回収するなど、比較的マイルドな処理方法となります。

ただしその際、銀行は5,000万円分の貸倒引当金(事実上の損失)を積んでおく必要があります。

そしてもう一つの処理方法は、直接償却です。

直接償却は間接償却よりも過激な処理方法で、その方法は3つ(以下①②③)あります。

①銀行側が貸した1億円を諦める「私的整理」

②貸し先であるA社を倒産させ1億円を諦める「法的整理」

③1億円回収の権利を整理回収機構などに売却する「債権売却」

①②③、どれをとってもA社は多大なダメージを受け、日本経済にとってもショックの大きい処理方法です。

むろん、この場合でも銀行側は1億円分の貸倒引当金を用意しなければなりません。

要するに、不良債権の処理とは、銀行が貸して返ってこないおカネをどのようにバランスシート上で処理するのか、という問題になります。

不良債権の処理には様々な議論があるところですが、大切なことは「その処理が、日本経済に大きなショックを与えないようにすること」です。

ところが、この処理をめぐり、極めて不必要に日本経済に大きなショックを与えたのが小泉内閣です。

あのとき(森政権末期から小泉政権にかけて)、なぜか突如として「不良債権が問題だ…」「不良債権を処理しなければ日本経済は復活しない…」などと叫ばれはじめました。

そしてメディアらは、早期の過激な処理方法を煽ったのです。

これらの背景には米国の圧力があったと言われています。

「言われている…」と言うと、なんだか陰謀論っぽく聞こえますが、けっして陰謀論などではありません。

実際、ブッシュ米大統領が森首相に「不良債権の早期処理」を促しています。

ところが、幸いにして森首相の不良債権処理の動きは鈍かった。

その森首相は「神の国発言」で退陣となり、小泉政権が誕生します。

小泉政権となってからも、米国側から執拗に「不良債権の早期処理」を再三にわたって要求してきました。

たしか朝日新聞に掲載されていたと記憶していますが、ブッシュ大統領から小泉首相への親書の存在が明らかになっています。

それを以下、抜粋します。

「これは友人としての助言として受け取ってほしい…」「銀行の不良債権や企業の不稼働資産が、早急に市場に売却されていないことに、強い懸念を感じる…」「私は日本が不良債権を処理し、(塩漬けになっている)資金や不稼働資産を解き放ち、最も効果的に資産を活用できる人たちの手に委ねて、機能を回復させることが必要だと信じている…」「それが日本が本当に構造改革や景気回復への道筋をたどろうしているシグナル(合図)になるだろう…」

こういうのを「助言」と言うのでしょうか。

私にはただの「圧力」としか読み取れません。

要するに「はやく不良債権を処理して、安く外資(俺たち)に売却しろ!」と。

さて、その助言に忠実に従ったのが小泉内閣であり、小泉内閣の閣僚として実際に不良債権処理を断行し、ご活躍されたのが竹中先生なのでございます。

明日につづく…