歴史のはじまり…

歴史のはじまり…

米国の中間選挙の結果をみますと、生まれた世代によって支持政党が異なるなど、米国社会の分断が改めて浮き彫りになったような気がします。

例えば、気候変動や銃規制を求める若者は民主党を支持し、古き良き米国を求める高齢者は共和党を支持するといったように。

さて、現今世界の危機は、1990年代以降の世界を規定してきた秩序システムの衰退に派生しています。

とりわけ米国の「国際社会を主導する…」という意思と能力の相対的低下は、伝統的な地政学リスクの負の側面を浮き彫りにしています。

1990年にイラクがクエートを侵攻した際、即ち湾岸戦争で米国は多国籍軍を主導して戦争を短期間で終了させ「武力による国境の変更は許されない」という国際規範を確立しました。

その後、ご承知のとおり約30年間にわたり米国が主導する国際秩序は揺るぎないものとなりました。

当時、政治学者のフランシス・フクヤマは、歴史上続いてきたイデオロギー闘争は米国が主導する自由民主主義勢力の勝利によって終わるだろうと主張して『歴史の終わり』を著しました。

しかし今回のロシアによるウクライナ侵攻では、核を保有する常任理事国がその規範を無視していること自体に本質がみえますが、米国は経済制裁と武器の供与をしているのみで紛争の長期化は避けられない状況にあります。

今や地域大国の台頭を許し大国間競争を激化させ、再び伝統的な地政学が復活し経済面においても資源争奪戦がはじまっています。

その点、湾岸戦争は冷戦後のパクス・アメリカーナのはじまりを告げる象徴であったのに対し、ウクライナ戦争はパスク・アメリカーナの終わりを象徴しているように思えます。

こうした伝統的な地政学リスクの高まりに加えて、気候変動やグローバルヘルス(パンデミック対応等)、あるいは核の拡散問題等々、これら地球規模で対処しなければならない極めて現代的で複雑な課題も山積しており、ある意味で新旧の脅威が交錯しています。

それでいて現今の国際秩序に挑戦しているリビジョニスト国家であるロシアや中国にしても、それぞれに内外に問題を抱えています。

ウクライナ侵攻で苦戦するプーチン大統領にしても、異例の3期目に入った習近平国家主席にしても、その指導体制は必ずしも盤石ではありません。

やがて両国では凄まじい権力闘争がはじまるのではないでしょうか。

冒頭でも申し述べたとおり、米国は米国で民主主義と国家としての凝集性が19世紀以降、かつてないほどに大きな危機に脅かされています。

内なる分断が外政に影響し結果として地政学リスクを高め、地政学リスクの高まりが地球規模の新たな問題に関する国際協調を困難にし、国際環境の悪化が地政学緊張を一層高めるというように、国際社会はまさに負の連鎖に突入しているようです。

世界はまさに覇権国なき時代に突き進んでいるといっていい。

無秩序化する世界において国家の独立と平和を確立するためには、いま私たち日本国民は何をすべきか…