理解に苦しむFRBの利上げ

理解に苦しむFRBの利上げ

米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備理事会)が利上げを決定しました。

利上げ幅は0.75%で、通常の3倍の利上げ幅となります。

なお、政策金利は3%超となりリーマン危機以前の水準にまで引き上げられ、年末見通しも3.4%から4.4%へと大幅に上方修正されたようです。

利上げした理由は、例によってインフレ。

しかしながら、現在の米国経済で起きているインフレはデマンドプル型ではなく、コストプッシュ型(供給制約に伴うインフレ)なので、利上げする理由にはならないはずです。

ただただ米国経済を悪化させるだけです。

むろん、さらなる円安も予想されます。

米国ではバイデン政権がコロナ対策により1.9兆ドルの財政出動が為されましたので、コロナ明けの需要回復期にデマンドプル型のインフレになったのは確かです。

ですが現在はデマンドプル型ではなくコストプッシュ型のインフレに陥っています。

供給制約を解消するためには、政府による財政支出の拡大や企業投資が必要になるはずです。

企業の投資が求められているときに、どうして金利を引き上げるのでしょうか。

理解に苦しみます。

日本でもそうですが、主流派経済学に洗脳された人たちは、インフレと聞くと直ぐに「財政を引き締めろ」「金利を上げろ」と騒ぎ立てます。

ですが、彼ら彼女らは「インフレ」には2種類あることを理解していない。

財政支出の拡大により需要が高まって物価が上がっているのであれば、それはデマンドプル型のインフレです。

そのときは財政支出を削減し、金利を引き上げすることで需要を抑制しなくてはなりません。

一方、戦争、疫病、災害、あるいは外交関係の悪化等によりサプライチェーンが滞って供給制約が生じた場合には、供給能力を引き上げる政策(財政出動、利下げ、投資減税等々)が求められます。

ただ、コストプッシュ型インフレは状況が実に複雑なので、それを解消するための政策的舵取りは非常に難しい。

しかも供給能力が引き上げられるまでには時間がかかりますので、いったんはインフレが悪化します。

その間、インフレを耐え忍ぶ根気が必要になりますので、1970年代のインフレもそうでしたが、コストプッシュ型インフレというのは実に厄介なしろものなのでございます。

なお、今回のコストプッシュ型インフレは、中東戦争やイラン革命に起因した1970年代のそれよりもはるかに複雑です。

なぜなら株主資本主義の弊害、米中貿易摩擦、コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、緊縮財政などなど、これらがすべて供給制約の要因になっているからです。

特に日本の場合は、企業物価が上昇しているもののコアコアCPIはゼロ%です。

即ちデフレと共存したコストプッシュ型インフレですので、「円安で物価が上がっているから財政を引き締めろ」という話にはなり得ません。

コストプッシュ型インフレの兆候は昨年から既にでていたのに、岸田内閣が物価対策に手をつけたのはなんと今年の6月です。

なんと呑気なことか…