世界第4位の移民国家

世界第4位の移民国家

9月27日に予定されている安倍晋三元首相の国葬は、約2億5000万円の費用を要するらしい。

その財源は予備費から支出することを閣議決定したとのこと。

べつにいくら支出しようとも、政府の支出(赤字)は民間部門の収入(黒字)になるのだから、それはそれで一向に構わない。

予備費を余らせて来年度に繰越されるのであれば、支出対象は何であれ年度内に支出してほしい。

それがデフレ対策というものです。

選挙演説中に凶弾に倒れた悲劇の元首相ということで、それだけに哀悼の意をより深くする民意があることも理解していますし、同時に安倍元首相の政治家としての評価は別のところにあることも理解しています。

そのうえで安倍政治を振り返ってみますと、世間が言うほどに評価に値する政治だったのでしょうか。

とりわけ「安倍さんは外交で頑張った」「安倍さんは集団的自衛権の行使について法的整備をした」「アベノミクスで株価が上がったのは事実だ」等々、防衛・外交・経済面などで評価されているようですが、その一方で多くの国益を損ねたことも事実です。

因みに、安倍さんは「集団的自衛権の行使を可能にしたことで日米安保を深化させた」と考えているようですが、米国が日本に求めているのは「集団的自衛権」ではなく「集団安保の集団的措置」です。

前者は権利の行使ですが、後者は責務の遂行です。

責務遂行に主体性をもって参加できる国こそ、真の独立国です。

安倍さんにはそこまで踏み込んで頂きたかった。

株価についても、アベノミクス効果というより、たんに日銀の量的緩和による影響です。

黒田日銀が「インフレ率2%を目標に量的緩和を行います」とコミットメントし、民間銀行のもつ国債を購入して日銀当座預金を膨らませたことで、金融市場の円安期待が高まりました。

日本の株式市場の約7割は外資が動かしているのは周知の事実ですが、円安により割安感をもった外資の日本株買いによって株価が上昇しただけの話です。

株価上昇はGDP(実体経済)には何ら関係なく、財務省の緊縮に屈した安倍政権はデフレを払拭することはできませんでした。

加えて、安倍内閣が行った水道法改正は自治体の水道事業が外資に売られる素地をつくってしまいましたし、電力の「発送電分離」や「小売り自由化」などの規制緩和政策が電力需給の逼迫をもたらしています。

意外と知られていませんが、第一次安倍内閣のとき(2006年12月13日)、共産党の吉井代議士が「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」を安倍内閣に提出したことがあります。

吉井代議士の質問は「日本の原発が地震や津波で冷却機能を失う可能性があるのではないか」という指摘でした。

これに対する安倍内閣の回答は以下のとおりです。

「我が国において運転中の55の原子炉施設のうち、非常用ディーゼル発電機を二台有するものは33であるが、我が国の原子炉施設においては、外部電源に接続される回線、非常用ディーゼル発電機及び蓄電池がそれぞれ複数設けられている。また、我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない」(同年12月22日、閣議決定)

この5年後、東日本大震災が発生し、福島第一原発が回答書とは全く異なる事態に至ったのはご承知のとおりです。

これほど無責任な話がありましょうか。

安倍さんの無責任ぶりはまだ他にもあります。

2014年10月1日、安倍さんは国会で「安倍政権は、いわゆる移民政策を取ることは考えていない」と明言していました。

当時すでに、世界各国の指導者が移民政策の失敗を認めていたわけですから、当然といえば当然の話でしょう。

しかしながら、こともあろうに安倍さんは「外国人労働者」と言葉(定義)を誤魔化し、特区などをつかったりもして事実上の移民政策を推進したのです。

結果、冒頭のグラフのとおり、すでに我が国は世界第4位の移民国家になっています。

安倍さんが移民政策を進めた背景には、安価な労働力を欲する経済界からの要望があったのだと思います。

人手不足が深刻化するなか、企業としてはカネのかかる生産性向上の投資はやりたくない。

といって、日本人を高い賃金で雇用するのも嫌。

とにもかくにも「安く働く労働者が欲しい…」というわけです。

それに安倍さんが応えた。

しかしながら、このような考え方は資本主義に反しています。

資本主義とは、文字通り「資本(生産資産)」を投じることで生産性の向上を図り安定的に成長していく経済モデルのことです。

資本を投じることなく、安価な労働力により利益を上げるのは資本主義ではありません。

あれだけ「移民政策はとらない」と言っていた安倍さんが、日本を世界第4位の移民国家にしてしまったのです。