防衛納税などありえない!

防衛納税などありえない!

①20年にわたる中国の経済成長と軍事力増強

②米国の経済力・軍事力の相対的退潮

③日本政府の愚劣なほどの緊縮財政(防衛費圧縮)

①②③の結果、東アジアの軍事バランスは崩れ不安定化し、そのことが我が国の安全保障を脅かしています。

そこで、防衛力の増強とその財源確保が我が国の主要な政治テーマの一つになっています。

きのう(8月25日)、政府与党である自民党の国防部会(幹事会)が開かれ、会議後、宮沢国防部会長が記者会見で「防衛費増額の財源として、防衛納税や防衛国債の発行などが提案された」と述べました。

防衛であれ、福祉であれ、財源は「国債発行」以外には考えられないのに、ここで「納税による財源確保」が議論されてしまうところが残念です。

貨幣に対する無知、経済に対する無知を諸に曝け出しています。

それを理論的に指摘できないメディア(報道機関)も情けない。

そもそもの不理解は「おカネ(貨幣)は、どこかから物理的に持ってこなければならないモノ」という誤解に起因しています。

彼らが抱いているおカネ(貨幣)のイメージは「商品貨幣論」と言われるもので、即ち「貨幣の価値は貴金属のような有価物に裏付けられている」という学説に従っています。

しかしながら現代の貨幣は、例えば日本政府(日銀)が発行している日銀券は貴金属などの有価物との交換を保証されない「不換紙幣」です。

にもかかわず日銀券は「おカネ(貨幣)」として広く使われ、世に流通しています。

商品貨幣論は、これを説明することができない。

商品貨幣論では、物々交換の不便を解消するために貨幣が生まれた、という解釈になっています。

とろこが、人類史上、物々交換による経済が成立したことも存在したこともありません。

信じられないかもしれませんが、これまで貨幣の起源を研究してきた数多の歴史学者や人類学者たちの努力にもかかわらず、残念ながら「物々交換から貨幣が生まれた」という証拠資料は未だ発見されていません。

それどころか、硬貨が発見されるより数千年も前のエジプトやメソポタミア文明において、ある種の信用システムが既に存在していたことが確認されており、貨幣は物々交換や市場における取引ではなく、「資産(信用)」と「負債」の関係を起源としていることがわかったのです。

つまり、貨幣は「債権・債務の記録」であり、もっと言えば「負債の一形式」である、と。

例えば、壱万円札や千円札などの紙幣は、日本政府(日銀)の負債(借用証書)であり、それを保有するものの資産ということになります。

お札を発行する日本政府(日銀)が債務者であり、お札を保有する日本国民が債権者なのです。

そこには金銀などの貴金属による裏付けは存在しない。

その価値を裏付けるのは貴金属などの有価物ではなく、インフレ率(日本経済の供給能力)です。

ゆえにインフレ率が許す限りにおいて、日本政府の負債(借用証書)発行額に上限はありません。

デフレ経済という需要不足(貨幣不足)状況に陥っている日本において、もしも納税(増税)という手段によって国民から貨幣を徴収する政策を採ってしまうなら、国民経済は余計にデフレ化し供給能力が破壊されることになります。

供給能力が破壊されていくと、円安という為替事情とは無関係にインフレ率が上昇していきます。

であるからこそ、インフレ率(コアコアCPI)が0%台で推移している今、まちがっても防衛納税などやってはならないのでございます。

むろん、国債を発行すべきです。

因みに、そこに「防衛」なんて冠をつける必要などない。

ふつうに国債を発行すればいい。

その支出先が例え無駄なものであったとしても、デフレ(供給能力の毀損)対策になります。