軍事は外交の背景としての存在機能を有している

軍事は外交の背景としての存在機能を有している

ペロシ訪台で激化する米中対立。

中国は台湾のみならず、尖閣をふくむ我が国の南西諸島をも侵攻する方針のようです。

さて、ペロシ訪台以前の6月中旬、米国はアラスカやハワイ州に配属されている米空軍のステルス戦闘機(30機)を、山口県岩国市にある米海兵隊の岩国基地に集結させました。

30機の内訳は、第5世代戦闘機といわれるF22ラプターが12機、F35ライトニングが18機とのことです。

これほどの数の同機が日本に集結するのは極めて稀なことで、内外からの注目を集めていました。

その背景には、①その前月の5月に中国海軍の1隻目の航空母艦「遼寧」が沖縄の南側の海上で軍事演習を行ったこと、②同5月下旬にかけて、中国空軍とロシア空軍の戦略爆撃機が日本海方面から太平洋方面に及ぶ合同飛行を行ったこと等々への牽制ではないかとの憶測も流れていました。

しかしその後、6月下旬から米国は、沖縄の嘉手納基地所属のF15イーグル、岩国基地に常時配備されているF18ホーネット及びF35ライトニングⅡB型、そして臨時に飛来中の同A型とF22ラプターを動員した訓練を実施しています。

これら米空軍と米海兵隊の戦闘機は、韓国の南側から尖閣諸島の北側にむけた日中の中間線に沿って飛行し、そのうちの1割程度は明らかに中間線を超えて中国側に跨いだとされています。

米軍はこれらの行動にKC-130J空中給油機を随伴させ、主として尖閣諸島の手前の空域で飛行する戦闘機に空中給油を行い後続距離を確保したようです。

要するに米国は、大型の原子力空母を投入せずとも軍事行動が可能であることを中国に見せつけたわけです。

因みに我が国の航空自衛隊は、当該作戦には参加しておらず、周辺でAWACS(空中警戒管制機)やE-2C(早期警戒機)が警戒監視に当たっただけだとロイターが伝えています。

つづく7月7日にも米国は岩国基地において、同基地に常時配備されているF18スーパーホーネット、F35ライトニングⅡB型に加えて、臨時配備されたF35ライトニングⅡA型とF22ラプター等による数機発進準備訓練(エレファント・ウォーク)を行い、その映像を公開しています。

推察するに、こらら米空軍と米海兵隊による一連の動きは、近々、米国のバイデン大統領と中国の習近平主席が2者会談を行う予定があるからだと考えます。

空母を必要とせずとも大規模な空軍力を投入できるという「軍事的優位性」を中国に示した上で会談に臨み、交渉を有利に進めたい狙いがあるのだと思います。

だとすれば、ホワイトハウス中枢が「ペロシ訪台」に反対していたことも頷けます。

2者会談が成立するかどうかは別として、軍事が外交の背景として存在していることを物語っています。