脱グローバリズムに踏み込んだ!? G7共同声明

脱グローバリズムに踏み込んだ!?  G7共同声明

6月4日から5日にかけて、日本、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ、イタリアの7ヵ国の財務大臣及び中央銀行総裁が議論するG7が開かれました。

ご承知のとおりG7は7ヵ国間において「世界経済の成長促進」や「為替相場の安定」等々を図るための政策協調の場として定期的に開催されています。

もともと大戦後は、ソ連(当時)と中国を除く国連常任理事国3ヵ国(米、英、仏)の首脳同士でこの種の話し合い(サミット)が行われていましたが、やがて急成長した日本とドイツの経済力を無視しては会議が成立しなくなり、米、英、仏に日本とドイツが加わって5ヵ国で会議を行っていた時期もありました。

G7として、正式な会議体となったのは1986年からだと記憶しています。

現在では、欧州委員会(EC)委員、欧州中央銀行(ECB)総裁、ユーログループ議長、IMF専務理事、世銀総裁などの国際機関も出席しています。

毎回、G7では会議が終了すると必ず共同声明が発表されますが、今回の声明文をよく読むと歴史的な転換点を感じさせる箇所がみられます。

とくに次の部分です。

「我々は、大規模で高利益の多国籍企業について10%の利益率を上回る利益のうちの少なくとも20%に対する課税権を市場国に与える、課税権の配分に関する公平な解決策に至ることにコミットする。我々は、新たな国際課税ルールの適用と、全ての企業に対する全てのデジタルサービス税及びその他の関連する類似の税制措置の廃止の間で、適切な調整を行う。また、我々は、国別での15%以上のグローバル・ミニマム課税にコミットする」

要するに、世界的な税の公平性を担保するために「払うべき国において適正に税を支払う税制にしようじゃないか!」と言っています。

巨大プラットホームで荒稼ぎする多国籍業やグローバル企業が典型的ですが、彼らはタックス・ヘイブンに利益を移し、稼ぐ場を提供しているその国には税金を落とさない。

だから「ちゃんと彼らから税金を取ろうよ」というわけです。

租税回避地問題は何年か前のG7でも取り上げられていましたが、ここまで踏み込んだのは今回がはじめてではないでしょうか。

もう一つは「法人税の最低税率を15%に設定しよう」とも言っており、これも大きな転換点です。

これは「15%まで引き下げろ」ということでなく「それ以下に引き下げてはならない」というもので、グローバリゼーションの名のもとに行われてきた「世界的な法人税の引下げ競争に終止符を打つべきだ」としています。

因みに、米国は法人税の最低税率を「21%にするべきだ」と主張したようですが、まずはできるところからということで15%の妥協案でまとまったようです。

要するに今回の共同声明は「グローバル企業や多国籍企業に振り回される現状を終わせねばならない」というコンセンサスのもとに成立しており、しかもそれを、これまでグローバリズム経済を主導してきた覇権国・米国が率先して問題提起しているわけです。

ようやく時代は脱グローバリズムにむけ変わりつつあります。

日本では未だに「法人税率の大幅引下げを」と叫んでいる人たちがいますが、この種の意見はもはや「グローバリズムの終焉」という世界的趨勢から大いに逸脱しています。