大東亜戦争の分水嶺

大東亜戦争の分水嶺

ちょうど80年前の今日、その後の我が国の命運を決める海戦がはじまりました。

その海戦とは、ミッドウェー海戦です。

因みに、日本が大東亜戦争に突入せざるを得なかった理由については、昭和26年5月3日に米国の上院(軍事外交合同委員会)で証言にたった際のマッカーサーの言葉を引用しておきます。

「日本は絹産業以外には、固有の天然資源はほとんど何もない。彼らは綿も羊毛も石油も錫もゴムも、そのほか実に多くの原料が欠如している。そして、それらすべて一切がアジアの海域には存在していた。もし、これらの原料の供給が断たれたら、日本国内で1000万人から1200万人の失業者が出ていたでしょう。日本人はこれを恐れていました。したがって、日本が戦争に突き進んでいった動機は大部分が安全保障の必要性に迫られてのことだったのです(Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security)」

マッカーサーが言ったとおり、1941年12月8日、やむを得ず日本は戦争に突入しました。

その初戦から、日本はまさしく破竹の勢いで勝ちまくっていました。

海戦だけでも、真珠湾攻撃、ウェーク島沖海戦、ポートダーウィン空襲やラバウルなど南太平洋の攻略、セイロン沖海戦、珊瑚海海戦、これらすべて連戦連勝でした。

そして1942年の今日(6月5日)、運命のミッドウェー海戦がはじまります。

今から80年も前の当時、10隻以上もの航空母艦をもって機動部隊(現在は「空母打撃群」という言い方をします)を編成できたのは日本と米国だけでした。

例えば英国は空母を保有していたものの、日本軍のような機動部隊は持っていません。

ドイツなどは空母すら持っていませんでしたし、ソ連に至ってはまともな海軍すらありませんでした。

ミッドウェー海戦は、日米の二大海軍国の空母機動部隊同士がいわば一騎打ちした戦いです。

真珠湾攻撃で討ち漏らした米国空母は日本海軍にとって最も忌まわしい存在であったため、日本軍のミッドウェー島攻略作戦の真の目的は敵空母機動部隊の殲滅にありました。

太平洋のど真ん中にあるミッドウェー島を奪取する、というのはあくまでも表向きの理由であって、この作戦を推進した山本五十六連合艦隊司令長官の狙いは「ミッドウェー島に攻撃を仕掛ければ、それに誘い出されて敵空母機動部隊は必ずやってくるはず。そこに現在は数のうえで圧倒的優位にある日本側の空母戦力のすべてを結集し、誘い出した敵空母を一気に殲滅する…」ことにありました。

この海戦は、普通に考えれば日本軍が圧勝するはずでした。

戦力比較をみても、日本の主力空母は4隻(赤城、加賀、蒼龍、飛龍)、対する米国は3隻だったので日本側に分がありました。

この直前の珊瑚海海戦では、“妾の子”と言われていた第二級の機動部隊が米国空母を撃沈しています。

ならば、“本妻の子”が出動するこの戦闘に負けるはずがない、ということでした。

ところが、日本はこの戦闘で惨敗します。

詳しい説明は省略しますが、ただただ敗因は、日本軍の驕りと油断、そして現場の最高司令官の無能さです。

諜報は筒抜け、敵は日本の暗号を逐一解読していたにもかかわらず、「そんなはずはない…」と言って暗号を一切変更せず、偵察もいいかげんで、何より現場の最高指揮官であった南雲忠一の判断も実にお粗末なものでした。

いいかげんな偵察により敵戦闘機の接近にまったく気づかず、援護戦闘機を空母上空に待機もさせなかったことで爆弾を積み込んだ空母の防空体制ががら空きとなっていました。

そこへ、米国の急降下爆撃が一気に攻撃を仕掛けます。

しかも南雲司令官が、時間がないなかでの兵装転換(爆装から雷装へ)にこだわったために空母甲板は爆弾だらけ。

爆弾だらけ状態の空母甲板に、急降下爆撃を受けたのです。

それが致命的でした。

結果、我が国の主力母艦である、赤城、加賀、蒼龍、飛龍の4隻の空母すべてが撃沈され、300人以上の優秀な飛行機乗りたちが命を落とします。

その後、日本軍は航空優勢を失い、敗戦への道を転げ落ちます。

ミッドウェー海戦は日本にとっての分水嶺となってしまったのです。

因みに、この戦場に連合艦隊の最高司令官であった山本五十六の姿はありませんでした。

彼は、ミッドウェー島から500マイルも離れた戦艦大和のなかで戦況報告を待っていただけ。

その後も山本五十六が戦場前線に立つことは一度もありませんでした。

日露戦争のとき、常に前線に立って指揮をとっていた東郷平八郎とは大違いです。

歴史に「if」はないが、ifがなければ洞察できない。

もしもミッドウェー海戦で日本が負けていなかったらどうなっていたでしょうか。

米国海軍は太平洋での軍事的優位を失いますので、日本軍の本土上陸を恐れ西海岸に陸軍を集中させなければなりません。

すると米国は、ドイツと戦っている英国を支援することができなくなります。

当時の英国に米国の支援なしにドイツに勝つことは不可能です。

すると、ドイツがスエズを占領し、カイロ占領し、中東の石油を抑える可能性が高まります。

ドイツと同盟を結んでいた日本に石油が入ることは間違いなかったでしょう。

石油さえあれば日本は最強です。

そもそも石油がないために戦争しているのですから、石油さえ手に入れば日本に戦う理由もありません。

どこか早い段階で我が国に有利な条件を米国に飲ませ、大東亜戦争は終結していたかもしれない。