プーチン大統領もまた新自由主義の敵だった

プーチン大統領もまた新自由主義の敵だった

ロシア・ウクライナ戦争がはじまってから、ついに3か月が過ぎました。

直近のニュースをみると、ロシア軍はウクライナ東部の掌握に向け、今やセベロドネツクに戦力を集中しているようです。

とくにウクライナ側の補給路を断つため、セベロドネツク南部から延びる複数の高速道路の遮断を試みているらしい。

未だ戦争終息の出口は見えない。

西側メディアの情報によると「いよいよプーチン大統領の権力基盤が弱体化しつつある…」とのことですが実態はよく解りません。

もしそうであれば、この戦争を仕掛けた者たちにとっては目論見通りに事は運ばれているにちがいない。

プーチン大統領が、なぜこれほどの長期間にわたってロシア大統領(一時期は首相)として君臨しつづけることができたのかを知る日本国民はあまり多くはないでしょう。

理由は、多少は専制的なところがあったとはいえ、多くのロシア国民からの人気と支持があったからですが、ではその人気はどこから来たのか…です。

それを知るには少し歴史を遡らねばなりません。

今から31年前の1991年、私が大学生3年生のときですが、この年にソビエト連邦が解体されました。

その後、ロシアでは生活物資等が極端に不足し、一切れの食パンを買うのに人々が長い行列をつくらねばならない状況でした。

人道的な立場から我が国も支援物資として大量のカップラーメンをロシアに送りましたが、お湯を沸かすガスすら確保できなかったといいます。

街には失業者が溢れ自殺者が倍増、殺人事件や暴力事件の数は4倍に跳ね上がり、出生率も半減、将来の展望が見えない人々は密造酒や麻薬に走ったようです。

密造酒といっても、工業用アルコールやシェービングローションやマウスウォッシュ等々、およそ飲料用ではないアルコールから造られたお酒です。

これを飲むと死亡リスクは20倍になったらしいから、とりわけ若い男性たちは服毒薬代わりに飲んでいたようです。

当時のロシアでは「街から若い男性が消えた…」と言われていたらしいので、密造酒の大量摂取により命を落とされた人たちは多かったのでしょう。

因みに1991年から1994年の3年間で、ロシアの平均寿命は6年も縮まってしまったというから衝撃的です。

1994年といえば、私はすでに社会人として就職していましたが、当時、テレビニュース等でロシアの状況をみたとき「これは経済効率の悪かったソビエト連邦が崩壊した結果だ…」と勝手に解釈していたのですが、実はそうではありませんでした。

例えば、同じソビエトでも、旧ソ連圏であるそれこそウクライナやベラルーシ、あるいはポーランド等ではロシアほどに経済状況は悪化していません。

ロシアだけが、まさに「地獄絵図」と化したのです。

そこに、事の本質があります。

ソ連崩壊後、一人の経済学者がロシア政府の顧問となって、ロシアの経済政策の実質的な舵取りを担っていました。

その経済学者とは、米国ハーバード大学のジェフリー・サックスです。

彼がロシアの政府関係者たちを騙くらかして行った経済政策は主として次のとおりです。

①価格の自由化、②貿易の自由化、③国営事業の民営化です。

そうです、新自由主義政策です。

これにより、当然のことながら中間層は崩壊、ロシア社会は少数の成金と大多数の極貧層に二極化し、ソ連時代よりも更に超格差社会となります。

インフレ率はなんと2,506%にまで跳ね上がったというから凄まじい。

あまつさえ、国営だった事業も資産も民営化され、外資系(当然、米国系)の企業に買収されることになりました。

要するに、ロシアが世界の市場で戦うための武器ともいえる石油、天然ガス、アルミニウムなどに関するビジネスが、一部のユダヤ系ロシア人や米国系企業に奪われてしまったわけです。

ジェフリー・サックスは新自由主義に基づく民営化によってロシアの天然資源の利権を米国に奪わせることに成功したわけです。

むろんロシア国民の犠牲の上で。

1993年にロシア議会が制圧されましたが、あのとき立てこもったのは新自由主義政策に反対する人たちでした。

それを当時のエリツィン大統領の命令のもとにロシア軍が包囲、武力鎮圧した結果、約500人の死亡者、約1,000人以上のけが人を出すに至ったわけです。

その後、外資に奪われていた企業(国営企業)を再び国営に取り戻していったのが、プーチン大統領です。

プーチン人気の根底には、こうした経緯があったわけです。

もしも今回のウクライナ戦争でプーチン大統領が失脚すると、ロシア経済は市場化され、国営企業が再び民営化される可能性が大です。

具現化すれば、米国はロシアの天然資源を再び支配下に置くことができます。

そのようにしてみると、テレビや新聞が報道する現在のウクライナ危機が少し違った角度で見ることができるのではないでしょうか。

因みに、ジェフリー・サックスの強い推薦によりハーバード大学の研究員になることができた人こそ、あの竹〇平〇です。

言わでもがな、ジェフリー・サックスがロシアでやったことを、彼は日本でやっています。