想定された侵攻

想定された侵攻

いよいよプーチン大統領が明確な軍事行動に打って出ました。

ロシア国防省によれば、きのう24日、ロシア軍は80箇所のクライナ軍関連施設、及び11の空港を攻撃したらしい。

「ほかに選択肢はなかった」

プーチン大統領はこのように述べ、むろんウクライナへの軍事侵攻を正当化しています。

考えてみれば世界を見渡すと、ロシアがウクライナで大きな賭けに出られるだけの絶好の条件が揃っています。

覇権国としての力を喪失した米国は、オミクロン株の国内感染拡大への対応に追われつつ、昨年の大統領選挙以降、深刻な党派対立によって国内政治そのものが分断され機能不全状況にあると言っていい。

しかもバイデン外交の照準は、どちらかというと中国の方に向けられていました。

同じくヨーロッパも再燃するパンデミックへの対応に気を奪われており、ドイツはショルツ首相が就任したばかりで、フランスもまた春の大統領選挙にむけて気を奪われています。

英国はパンデミックへの対応とともに、未だブレグジットの余波に追われています。

さらにはポーランドとベラルーシ国境で展開された移民危機によってEUの関心も、ここのところウクライナから離れていました。

加えて、パラリンピックを含めれば未だ北京五輪は終わっていない。

ロシア国内においても、ソビエト崩壊後にウクライナが独立国になったことを快く思わないロシア国民が多く、あまり死者を出さなかった2014年のクリミア併合を強く支持するロシア国民も少なくありません。

因みにテレビでは、モスクワ市内でウクライナ侵攻に反対するデモが行われている様子が放映されてもいますが国民的総運動にまでは発展していません。

こうした国内外の情勢から、プーチン大統領は「今が好機…」と判断したのかもしれません。

結局、米国が主導する経済制裁は効果に乏しく、ロシア政府高官、国有金融機関、ロシアの国債や採鉱産業の取引に従事する外国人がその対象とされていますが、しかしこれらの措置は米国が関係改善を目指しているヨーロッパの同盟国を含めて、ロシアやその支配層とは関係のない国民や企業を追い込んでしまうことにもなります。

それに、エネルギー供給をロシアに依存するヨーロッパ諸国の制裁にも迫力が出ない。

現に米国が頼みとしてきた経済制裁では、プーチン大統領のウクライナ政策を変更することはできませんでした。

おそらくプーチン大統領はロシア国境ではなく、旧ソビエト圏の境界線を防衛ラインとみなしています。

だからこそ、ウクライナをはじめロシアの近隣諸国(旧ソ連領)にNATOやEUに加盟するという考え方を絶対的に放棄させたいわけです。

その意味で、今回の軍事侵攻の最終戦略目標は、ウクライナに親ロシア派の新政権を樹立し、NATOやEUへの加盟を断念させることにあるのだと推察します。

ロシアとの紛争解決を公約にして大統領に就任したウクライナのゼレンスキー大統領は当初、プーチン大統領に期待を寄せたようですが、ゼレンスキー大統領がロシアに対して妥協を許さぬ姿勢を示したためにプーチン大統領は腹を決めたのかもしれません。

むろん、かつてない戦力増強を利用して、米国を交渉のテーブルにつかせ、より幅広い問題の話し合いに応じさせることも付随的な戦略目標になっているものと思われます。

少なくとも、ロシアによるウクライナ侵攻は「晴天の霹靂」でもなんでもありません。

以前から想定されていたことです。

戦後教育に洗脳され、地政学的、歴史的、経済的視点から国際政治をみることのできない日本国民にはまこと理解し難いことかもしれませんが、覇権国が力を喪失した不安定な世界においては各地での地政学的衝突は避けられないのです。

そんな国際社会の荒波のなかで、未だデフレ経済を放置し、「覇権国・米国に守られている」という幻想の中に甘んじている国こそが我が日本です。