日米関係の深化が日本を弱体化させる

日米関係の深化が日本を弱体化させる

川崎市議会では11月26日から定例会がはじまっていますが、今日からは国会(第207臨時国会)もはじまります。

臨時国会ですので、会期は短く12月21日までの16日間です。

今日は岸田総理の所信表明演説がありますが、野党第一党である立憲民主党の代表が変わった下での初となる論戦に注目が集まります。

岸田総理もまた首相就任後初めて一問一答形式の予算委員会で野党に臨みます。

今国会の主たるテーマは、むろん新型コロナウイルス対策や経済対策などを盛り込んだ「2021年度補正予算案」となります。

とはいえ残念ながら、「こんな規模の補正予算(経済対策)じゃ足りないっ!」と、国民経済の正常化にむけて追求してくれる野党議員などほとんどいないでしょうけど…

逆に「膨らみ続ける歳出をどうするんだぁ~」などと、例によって財政規律の必要性を説く者、在りもしない財政破綻論を煽る者が多そうです。

このブログの主要テーマでもありますので繰り返し申し上げますが、現在の日本政府に深刻な財政問題など存在しません。

変動為替相場制を維持できるほどに国内供給力を有し、自国通貨建てで国債を発行している日本政府がデフォルト(破綻)するリスクなど絶対にあり得ないのでございます。

いたずらに財政規律の必要性を説いている人たちは経済財政に関する無智をさらけ出していることを恥じたほうがいい。

さて、補正予算のみならず、外交防衛面でも国会で議論すべき課題は多い。

おそらくは北京五輪の後、米大統領選前、というタイミングになろうかと思われますが、中国による台湾侵攻も現実味を帯びつつあります。

安倍元総理が日本経済新聞で「台湾危機は日米の有事」という論を展開したことに対して、さっそく北京がつよく反発しています。

来る台湾有事に際して、我が国はいかなる法的根拠をもって台湾有事に関わっていくのかの議論が尽くされているとは思えませんので、ぜひ国会で公明正大に議論してほしい。

台湾のみならず、あるいは新政権が発足したイラン情勢についても、日本国民の命を預かる国会議員であるならば強い関心をもってもらわねば困ります。

イランでは、前政権が巨大国内市場を欧米企業に開放する手段として「核合意」を利用しようと試みたのに対し、ライシ新政権は、むしろ中国、ロシア、近隣諸国との経済関係を強化することで、イランを制裁の余波から切り離していく戦略を採っています。

つまり、あくまでも米国の影響力に抵抗する姿勢を崩さず、今後の「核合意」への復帰に向けた交渉でも強硬姿勢を貫くことでしょう。

ところで国際政治上、イラン、ロシア、中国の3国は「リビジョニスト国家」と呼ばれているのをご存知でしょうか。

リビジョニスト国家とは、現状の世界秩序に変革を求める国家のことです。

現にイラン、ロシア、中国の3国はお互いに連携し米国が主導する国際秩序(集団安保体制)に亀裂を入れ、新たな国際秩序を形成しようとしています。

こうしたなか「日米関係の深化(強化)こそ日本の生命線だ」みたいに言っている政治家は何も見えていない。

「台湾危機は日米の有事」という考え方もまたその典型かもしれませんが、既に米国は集団安保を主導するほどの力は軍事力、経済力ともに失せており、いざとなれば台湾からも日本からも手を引く可能性すらあります。

日米関係の深化こそが我が国の防衛力(軍事力)を弱体化させてきた現実を、どうして日本の政治家たちはみようとしないのでしょうか。

むろん、非武装平和主義などは論外ですが…

古代ローマ帝国の英雄であるカエサルは「人間ならば誰にでも現実のすべてが見えるわけではない。多くの人が見たいと思う現実しか見てない」と言いましたが、そのことは現在の国会議員たちにそのまま当て嵌まります。

この臨時国会が閉会するころには来年度予算の政府原案が閣議決定されることになりますが、いつまで日本の防衛費はGDPの1%以内に抑制されつづけるのでしょうか。

来年度予算案は来年1月からはじまる通常国会で審議されることになります。

といって、政府原案が国会審議で修正されることなどまずありません。