日銀短観からもみえる不確実性への不安

日銀短観からもみえる不確実性への不安

日銀短観という統計があります。

正式名称は「全国企業短期経済観測調査」ですが、略して「短観(たんかん)」と呼ばれています。

日本銀行が行っている調査なので「日銀短観」です。

全国の約1万社の企業を対象に(四半期ごとに)、各企業が自社の業況や経済環境の現状(先行きも含む)についてどうみているかを日銀が調査しています。

むろん業況のみならず、売上高、収益、設備投資額といった事業計画の実績と予測値等々、企業活動全般にわたる項目についても調査しています。

さて、きのう発表された短観からは、緊急事態宣言が解除されつつも依然として厳しい景気情勢が続いていることが伺われます。

ただ、かろうじて海外需要が好調なことから、半導体製造装置などの生産用機械をはじめ幅広い業種での改善はありました。

上のグラフのとおり、大企業の製造業はプラス18ポイントとなり3ヶ月前に比べて4ポイント回復したのですが、自動車は世界的な半導体不足にあり、加えて新型コロナの感染拡大で東南アジアの部品工場からの調達が滞ったことから各社で減産が相次ぎ大幅に悪化しました。

一方、グラフで示した青色の線、則ち大企業の非製造業はプラス2ポイントで3ヶ月前に比べて1ポイントの改善にとどまりました。

内訳をみますと、緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大が続いたことで、とりわけ宿泊・飲食サービスがマイナス74ポイントと極めて低い水準で横ばいだったほか、旅行業や遊園地などの対個人サービスが大幅に悪化したことが響きました。

短観では3ヶ月先の景気の見通しについても訊いていますが、製造業では4ポイントの悪化、非製造業が1ポイントの改善の見通しにとどまっています。

要するに景気の先行きについては全体的に足踏み感が広がっているかたちです。

ご承知のとおり、国内では緊急事態宣言とまん延防止等重点措置がすべて解除され、政府は飲食店やイベントなどの制限を段階的に緩和する方針です。

そうしたなか日本総研が「コロナ禍の自粛で積み上がった家計貯蓄は22兆円にのぼる」という試算を明らかにするなど、宣言解除後の消費拡大に期待する声も高まっていますが、果たしてどうでしょうか。

日本経済は未だデフレ下にあり、なおも不確実性が高まっている中で「さぁ、おカネを使おう」という家計や企業がどれほどあるか。

宣言等が解除され、イベント等の制限が緩和されただけでは、力強い景気回復は見込めるはずもありません。

例えば製造業では部品の不足が機械など、自動車以外の分野にも広がることを懸念する声が上がりはじめています。

また原材料価格の高騰、あるいは中国恒大グループの経営悪化や米国の債務不履行騒ぎ(米政府のデフォルトはあり得ない)等々の影響もあって、もしも世界経済の回復の勢いが鈍れば現今の日本経済にとっての頼みの綱である「海外需要」さえも危うい。

今は何よりも内需を低迷させているデフレ経済を払拭するための財政政策こそが求められています。