政府の通貨発行上限を引き上げるために

政府の通貨発行上限を引き上げるために

今夏もまた断続的に大雨が降り続いた時期が長く、恐ろしき長雨が日本列島を襲いました。

例によって道路は冠水し、河川の越流や氾濫もあり、熱海では大規模な土砂災害によって多数の死者もでました。

これを受け、一部のメディアは「公共事業による防災には限界がある。もはや逃げるしかない…」などという馬鹿げた論調を撒き散らしています。

なお、公共事業に否定的な人たちには「おカネをかけて防災インフラを構築するより、予め災害保険に入っておいて、その上で被災者におカネを払ったほうが安上がりじゃん…」と言ってのける者もいます。

災害で失われるものはおカネだけじゃない、ということを理解できない功利主義者たちです。

彼らは、今だけ、カネだけ、自分だけ、というグローバリストと同じですね。

一方、「公共事業による防災には限界がある」については、大きな誤解があります。

そもそも我が国は、1997年からはじまった緊縮財政以降、公共事業を減らしに減らしてきたために防災インフラが脆弱化しています。

世界でも稀な超がつくほどの自然災害大国である我が日本国は、つねに国土に働きかけなければ、国土からの恩恵を受けることのできない国なのです。

むろん、国土に働きかけるにはおカネはかかります。

かかりますが、我が国は「インフレ率」の制約以外に通貨発行になんら上限がない主権通貨国です。

主権通貨国とは、変動為替相場制度を採用し自国通貨建て(日本なら円)で国債を発行できる国のことですが、そんな我が国に財源を理由に公共事業を縮小する必要性などありません。

通貨発行の制約条件たるインフレ率を決定するのが、国内の供給能力です。

例えば、堤防を整備できる建設会社及びその関連会社が国内に数社しかなかったとします。

それに対し、政府が何百兆円規模の堤防整備事業(公共事業)を発注したらどうなるか。

むろん、天文学的な需要過多(供給不足)となって、資材費、人件費、工費などが驚異的に跳ね上がることになります。

これがインフレ率の制約です。

であるからこそ、政府は国内の供給能力(ヒト・モノ・技術)を維持拡大していくことが重要なわけです。

ところが、我が国では1997年以降、財政収支の縮小均衡政策が断行されて、公共事業費が容赦なく削減・抑制されてきました。

結果、下の2つのグラフのとおり、建設許可業者数、及び建設業就業者数は減り続けています。

則ち公共事業を減少させたことが建設業の供給能力を減退させ、そのことが政府の通貨発行を余計に制約しています。

なお、建設業許可業者数のピークが1999年であったのに対し、建設業就業者数のピークが1997年であったことから、建設業界のリストラは建設業に従事する人たちの首切りから先に行われたことがわかります。

政府は早急にプライマリーバランスの黒字化目標を破棄して、公共事業の長期的な計画を示して財政支出を拡大する必要があります。

そのことが、各種災害から国民を守るためのインフラを構築するのみならず、建設業の国内供給能力を高めます。

国内供給能力が高まれば、政府の通貨発行(財政支出の拡大)上限も引き上げられます。