リベンジ消費などありえない

リベンジ消費などありえない

今週の16日、内閣府からGDP統計が発表されました。

4〜6月期の成長率は年率換算で1.3%でした。

2期連続のマイナス成長は免れたものの、1〜3月期のマイナス3.7%の落ち込みを取り戻すことはできませんでした。

そのなかで好調だったのは設備投資(+1.7%)と輸出(+2.9%)でした。

デジタル化にむけた企業投資が増えたほか、日本よりもワクチン接種で先行し景気の回復に成功している米国や中国むけの輸出が伸びたようです。

一方、GDPの6割を占める個人消費は+0.8%に留まりました。

ただ「店の休業や時短の影響でもっと落ち込むのでは…」という市場予想を上回ったとも言えます。

政府が外出自粛を要請していたにもかかわらず、外食や娯楽といったサービス消費が予想外に伸びて市場関係者を驚かせました。

巷には政府のコロナ対応への不満が蓄積されているためか、「政府の要請などきくかっ!」みたいな雰囲気が醸成されつつあるように思えます。

それでも個人消費はコロナ拡大前の水準から比べると6.5ポイントも下回っており、正常化には程遠い状態が続いています。

振り返れば今年前半(1〜6月)において、東京で緊急事態宣言が出されていなかったのは6ヶ月のうちわずか2ヶ月足らずです。

製造業を中心とする企業の活動で、なんとかこの難局をもちこたえたというところでしょうか。

先行きは実に不透明です。

今後、政府としては、ワクチン接種を加速化させることで秋以降には一定の感染終息に持ち込み、その上で外食や宿泊の分野で「リベンジ消費」といわれる爆発的な消費が起きれば自ずと景気はV字回復するのではないか、と目論んでいるようです。

しかしながら、この政府の景気回復シナリオには決定的な欠点があります。

たしかに米英などのワクチン接種で先行する国々では景気が回復していますが、それはロックダウンや営業規制等の見返りとして事業者や個人に対して充分な政府補償を出してきたからです。

例えば日本政府が国民個人全員に配ったおカネは、たったの10万円です。

多くの国民がコロナ禍でそれなりに所得を失っているのに、たった10万円でどのようにして消費を爆発させることができようか。

もう一つの欠点はワクチン接種のスピードです。

米国ホワイトハウスの公式資料によれば、ファイザー社のmRNAワクチンを2回接種することでデルタ株にも充分に対応できることが確認されています。

しかし日本の場合、政府と国会の無能によってワクチン接種の開始が他の先進諸国に比べてもだいぶ遅れてしまいました。

日本の接種スピードよりも変異株が感染するスピードのほうが早ければ、感染終息の時期は大幅にずれ込むはずです。

素人目にみても、もはや秋どころか来年の春以降になる可能性すらあるのではないでしょうか。

仮に10月までの国民の8割が接種を完了しても、mRNAワクチンの効果は半年と言われていますので、少なくとも既に先行して接種されている医療従事者や高齢者については、冬以降の感染ピークに備えてブースターショット(3回目の接種)が必要になりましょう。

因みに、若者の感染は、ファストフード店や学習塾などで広がっているとも言われています。

足元では緊急事態宣言の対象が13都府県に拡大され、期間も来月12日まで延長されました。

それだけでも経済損失は1兆円規模にのぼるとみられます。

なお比較的に好調とされてきた企業部門においても懸念材料が多い。

海外では東南アジアでの感染拡大によって部品の供給が滞るケースも出始めています。

加えて原材料価格の高騰もあって企業の収益を圧迫しそうです。

PB黒字化目標を破棄し大規模な財政出動を行わないかぎり、年内にコロナ以前の水準を回復するという政府の見通しを達成することなどほぼ不可能です。