「税収最高=景気回復」ではない

「税収最高=景気回復」ではない

2024年度の国の一般会計税収は約75.2兆円に達し、5年連続で過去最高を更新する見通しです。

それに対し、財務省の広報機関とも揶揄される日本経済新聞は、「企業業績の好調、物価上昇、賃金上昇により、法人税・消費税・所得税のいずれもが堅調に推移した。日本経済は一定の回復基調にある」などと、楽観的な報道を繰り返しています。

しかし現実には、この税収増の背景には、長年にわたる「健全財政」路線――すなわち政府支出の抑制と増税による緊縮政策――の副作用として、日本の供給能力が深刻に毀損されてきたという事実があります。

現在のインフレは、需要超過型(デマンドプル)ではなく、供給制約によって物価が押し上げられる「サプライロス型インフレ」です。

すなわち、インフレの本質的な原因は、需要ではなく、政府のデフレ放置がもたらした供給側の制約にあります。

ところがこの間、物価上昇に賃金上昇が追いつかず、実質賃金は39ヶ月連続でマイナスを記録しています。

日本経済新聞は「賃金が上昇している」と報じていますが、それが物価上昇に追いついていない以上、国民の生活実感はむしろ悪化しています。

国民生活が厳しさを増している今こそ、政府は従来の「財政規律」に縛られることなく、大規模かつ戦略的な財政出動に踏み切るべきです。

インフラ整備、設備投資、技術開発、人材育成など、供給力を再建・強化するための公共投資は不可欠であり、それこそが持続的な成長と安定した物価環境の基盤となります。

むろん、供給能力の回復は、短期的に実現できるものではなく、投資の効果が発揮されるまでには時間がかかります。

それまでの間、物価を引き下げるなど国民生活を支える必要がありますが、もっとも効果的な政策こそが消費税減税です。

財務省自身が「消費税は100%価格に転嫁されている」と明言している以上、税率を引き下げれば確実に物価が下がるはずです。

たとえば消費税率を5%に引き下げれば、単純計算で5%の物価下落が見込まれ、それはそのまま実質賃金の向上に直結します。

つまり、政府理論を借りれば、「消費税の減税は100%物価を下げる」ことになります。

これほど効果の確実な政策は他にありません。

また、常套句のように「これ以上、国債を発行すると金利が上がる」と主張する向きもありますが、国債金利は中央銀行の政策によってコントロール可能な変数です。

日本政府は自国通貨建て(日本円)で国債を発行しており、財政破綻のリスクは存在しません。

財政拡大がインフレや金利高騰、あるいは債務危機を招くとする「健全財政派」の理屈は、理論的にも実証的にも成り立たないのです。

何度でも言いますが、わが国は財政政策を転換すべきです。

プライマリーバランスの黒字化や財政健全化目標といった“自縄自縛”の政策枠組みから脱却し、国民の生活と所得を豊かにするための積極財政へ舵を切るべきです。

政府の黒字は、民間の赤字を意味します。

国の役割は、財政を黒字化させることではなく、国民の暮らしを豊かにし、将来に希望を持てる経済環境を築くことにあります。

真の「健全」とは、国民が安心して生活し、働き、子どもを育てられる社会のことではないでしょうか。