先般、ヨーロッパを代表する自動車メーカーであるフォルクスワーゲンがEV生産の減産を発表しました。
ヨーロッパと言えば、EVシフトの先導役としてEV化の動きを牽引してきたのは周知のとおりです。
そうした中でのEV生産の減産は大きな波紋を広げているようです。
フォルクスワーゲンは、ドイツ国内の工場の一つでEVモデルの生産を一時的に縮小する措置をとったらしいのですが、影響を受けるモデルは、SUVのID.4とセダンのID.7とのこと。
EVの需要は当初予定されていた生産台数を最大30%下回っているといいますから、シンプルにEVの需要よりも過剰に生産されている状態です。
ニーダーザクセン州のオラフ・リース経済相も「EVの登録台数は引き続き高い状態が続いているが、懸念されるのはフォルクスワーゲンだけでなく全メーカーの需要が現在落ち込んでいることである」とコメントしています。
リース経済相は、EV需要を拡大するためにEV購入に対する新たなインセンティブの導入について議論の必要性を主張しています。
とはいえ、私も政治行政に携わる者としてよく承知していますが、EV普及のために大きなインセンティブを導入するというのであれば、必ず出口戦略までセットの政策として行わなければなりません。
EVの生産を減産する大きな理由はEV需要は「EV需要が想定したほどではない…」というところが正直なところでしょう。
ご承知のとおり、EVは自動車業界では環境保護に非常に効果があるクルマとしてセンセーショナルに扱われてきました。
しかし残念ながらEVが普及する中で、EV社会の問題点が次々と浮き彫りとなってきました。
例えば、先日の当該ブログでもご紹介したとおり、北欧ノルウェーの事例などが象徴的です。
彼の国では、いまや新車販売のうち、80%超がEVとなっていますが、そこまで一気にEV化を行ってしまったことにより、電力不足が大きな問題となっています。
EVはバッテリーに外部からの電力を貯めて走行するため充電が必要なわけですが、EVの台数が一気に増加したことで電力需要も爆発的に増加してしまったのです。
もともとノルウェーは自然環境を活かし、生活で使う約95%の電力は水力発電でまかなわれており、川が凍り水力発電が束ねない冬季は生産貯蔵していた水素を使って発電しています。
水力発電は電力コストが安いため、ノルウェーでは電力価格も安く、電気代をドイツの2/3程度に抑えることに成功していました。
ところが、EVが増加したことで電力需要が爆増、ノルウェー南部では主に電気を海外から購入していることもあって電気代が高騰してしまったのです。
2022年にはウクライナ危機や水力発電の要となる雨量不足などの影響もあって、いまや電気代はガソリン価格以上になってしまいました。
因みにノルウェーでは、環境政策としてガソリンに重い税金をかけており、EUの中でも最もガソリンが高い国です。
こんな状況ですから、EVユーザーはランニングコストに頭を抱えてしまうわけです。
即ち、EU内で最も電気代が安価であったノルウェーですら、この有様なのです。
それに、これはノルウェーに限ったことではありませんが、充電設備の不足はEV社会に対する失望を広げています。
こうした事態を受け、さすがにEUの執行機関である欧州委員会でも、これまで目標としてきた2035年EV化を変更する動きが出ています。
ドイツやイタリアなどが修正を要求し、再エネ由来の水素を用いた合成燃料e-fuelを燃料とするクルマを規制の対象外とすることを求めているらしい。
要するに、EVシフトは黄色信号が点灯、いや既に赤信号が点滅しはじめています。
少なくとも現状をみれば、「EVだけで全ての問題は解決できない」というトヨタの考え方が正しかったのではないでしょうか。
トヨタの「全方位戦略」に期待します。