食料の2035年問題

食料の2035年問題

国連世界食糧計画(WFP)によれば、ロシアによるウクライナ危機侵攻後、深刻な飢餓に苦しむ世界の人々が1億人も増え、3億4500万人に達しているという。

むろん、我が国にとっても他人事ではなく、ここのところ食料品価格が上昇しているのはご存知のとおりです。

ただ、その要因はウクライナ危機だけではない。

コロナショックに伴うサプライチェーンの滞り及び生産量の低下、また世界的な異常気象による不作つづき、そして何よりも我が国にとっては中国による爆買いが大きい。

①ウクライナ危機、②コロナショック、③異常気象、④中国による爆買い、まさにクワトロショックです。

④については意外と知られていませんが、ここにきて我が国の食料輸入は中国に買い負けするケースがでています。

経済力を高めた国では、自ずと人口が増えます。

人口増が経済成長を高めるのではなく、経済成長が人口増をもたらしますのでございます。

人口が増えただけではなく、国としての経済力を高めた中国人民は、より豊かになりました。

ゆえに中国は、高値を提示して大量に食料を輸入するようになったのです。

例えば2020年の大豆の輸入量をみますと、中国が1億32万トンであるのに対し、我が国は大豆の94%を輸入に頼っているのですが、それでも僅か316万トンにしかすぎません。

つまり、日本は国際市場で僅かしか買っていないので、売り手国としては「日本に売るのは面倒くさい…」となってしまうわけです。

これが中国の爆買いによる「買い負け」問題です。

こうした状況で頼みの綱となるのは国産品ですが、海外からの輸入に依存する肥料や飼料が高騰していることから日本の農家を苦境に追い詰めています。

輸入する肥料や飼料の高騰により日本の農家のコストが上昇しているにもかかわらず、店頭に並んだお米や牛乳やお肉の値段は安いままになっています。

例えばお米の値段は現在、一俵9000円ぐらいですが、生産コストは一俵1万5000円かかります。

これでは悲鳴が上がるのも宜なるかなです。

このままだと農家の倒産連鎖が懸念されます。

赤字つづきのままで、農家経営を継続しろ、というほうが土台無理な話です。

現在、我が国のお米の自給率は98%を維持していますが、2035年には11%にまで落ち込んでしまうという試算もあります。

高齢化に伴う廃業と相まって、生産量の減少と地域の限界集落化に歯止めがかからない。

とりわけ、飼料の海外依存度は致命的です。

例えば、飼料のほとんどを海外に依存する牛肉の自給率は現在11%ですが、2035年には4%にまで低下すると言われています。

豚肉に至っては1%、鶏卵でも2%にまで低下するという。

実は鶏卵のヒナは、現在でも既にほぼ100%が海外依存なのでございます。

自給率80%の野菜でも、種の90%は海外からの輸入に依存しています。

ゆえに実質的な野菜の自給率は8%なのですが、これが2035年には4%にまで低下するらしい。

これまで「食料安全保障」という概念をもたなかった政治のツケが、飢餓となって国民に襲いかかるのでございます。

食糧危機を避けるためには、肥料、飼料、種子を含めた食糧自給率を高めること、即ち余剰生産を備蓄したり、輸出したりできるほどに国内生産力を高めることです。

なにより早急に打つべき対策は、既存の農家が廃業しないように、政府が一定価格で農産品を買い上げることです。

他の先進諸国が普通に行っていることです。