弱体化した電力安全保障

弱体化した電力安全保障

きのう、東日本の多くの地域が電力危機に陥りました。

政府は東京電力と東北電力管内にはじめて「電力需給逼迫警報」を出しましたが、とりあえず大規模停電は回避されました。

ただ、東北電力管内への警報については昨夜遅くに解除されたものの、東京電力管内においては今日(3月23日)も予断を許さない状況にあることから警報が継続されるとのことです。

それにしても昨日の東日本は寒気の影響で気温が下がりとても寒い一日でした。

あの寒さでは暖房などの電力需要が高まるのも無理はなかったと思います。

それに対して電力の供給は、先週の福島県沖の地震の影響で東電と東北電力管内に電気を送っていた6つの火力発電所が運転を停止しているため大幅に不足することが見込まれていました。

そこで政府は21日の夜、東京電力管内に「電力需給逼迫警報」を出し、企業や一般家庭に対し支障のない範囲でのできるかぎりの節電への協力を呼びかけたわけです。

この警報は電力供給の余力である予備率が安定供給に必要とされる3%を下回る可能性がある場合に出されるもので、今回が初めてのケースとなりました。

そして22日になって東北電力管内にも出されたわけですが、とくに東北電力管内は深刻なようです。

政府と東電は西日本の電力会社に電力の緊急融通を依頼しているほか、企業などが持つ自家発電をフル稼働するよう要請して電力の確保に努めているようです。

それでもさすがに電力の供給力に対する需要の割合を示す電力使用率(東電管内)は、午前7時ごろは86%でしたが、午前9時をすぎると97%、その後も午後2時ごろまでほぼ100%の水準が続きました。

東北電力管内も99%とギリギリの状態が続きました。

意外にも知らない人がおられますが、電気は蓄積することができません。

いま使っている電気は、今まさにこの瞬間に作られています。

実需に対して、常に供給をバランスさせなければならないところに電力供給の難しさがあります。

このバランスが崩れると、周波数が変化して質の悪い電気が流れることとなり発電所のタービンなどの機器が壊れてしまうわけです。

これを防ぐために各発電所には周波数の変化を検知した場合、緊急に運転を止める装置がついています。

これが一斉に作動したのが3年前の北海道胆振東部地震で起きたブラックアウトです。

地震により主力の火力発電所が止まり電力供給の半分が瞬時に失われて周波数が変化し、残りの発電所も緊急停止しほぼ全域の停電となりました。

先週の福島県沖の地震でも、震源から離れた東電管内で一時は209万戸が停電しました。

これも需給バランスが大きく崩れた結果で、送電線でつながっている関東でも発電所の損傷の恐れがあったために自動的に一部の発電所の運転が停止して大規模な停電となったわけです。

きのうはこうした事態は回避されたわけですが、実際の電力需給はギリギリの綱渡り状態です。

例えば昨日(22日)、政府と東電は東電管内の最大需要を4800万kWと見込んでいました。

それに対して供給が4400万kWしか見込めなかったことから、企業や一般家庭に対して400万kW分、即ち通常より10%の節電協力を要請したわけです。

しかし実際には150万kW分、目標の3割あまりしか節電が進まず、残る250万kW分の電力を賄う必要に迫られました。

そこで緊急稼働させたのが揚水発電です。

揚水発電は電力需要が減る夜間に余った電力を昼間に備えて溜めておくシステムです。

上と下に巨大な池をつくり、夜に余っている電力で水車を回転させて下の池にある水を上の池に運んで溜めておきます。

そして需要が高まる昼間に上の池から水を落として発電する。

いわば巨大な電池と言っていい。

昨日はその電池を使って持ちこたえようとしたらしいのですが、なかなか節電が進まず、焦った萩生田経済産業大臣は午後に緊急会見を開き、午後3時から8時までのあいだ更に5%(200万kW)分の節電の上澄み要請をしたわけです。

その後ある程度の節電が進み、なんとか揚水発電の電力で凌ぐことができ、ギリギリのところで大規模停電という危機が回避されたようです。

悲しいかな、揚水発電と節電により乗り切らねばならないほどに我が国の電力安全保障は弱体化しています。

そもそも国民や企業に「節電」や「計画停電」を要請しなければならないような国は先進国とは言えない。

原発を止めていることから火力発電をフル稼働させていますが、すでに老朽化している火力発電所も多いらしい。

このままでは、私たち日本国民は常にブラックアウトに怯えて暮らさなければならない。