消費税は、長年にわたり「安定財源」「社会保障のために必要な税」であるかのように説明されてきました。
しかし、その説明の裏側で、消費税という制度が、誰にどのような負担を強制し、誰を構造的に利しているのかについて、十分に語られてきたとは言えません。
消費税をめぐる議論が混乱しやすい理由の一つは、この税が、法制度上の「納税者」と、実際の経済的な負担の帰結とを、意図的に切り離した形で設計されている点にあります。
とりわけ、消費税制度の大きな特徴の一つに、輸出に対しては課税売上げの税率が0%とされている点があります。
これは「消費地課税」という国際的なルールに基づくものです。
その結果、輸出企業は、国内での仕入れや投資の際に支払った消費税について、国から全額の還付を受けることになります。
これが、いわゆる「輸出還付金」です。
ここで最も重要なのは、この還付金が、政府がどこかから新たに捻出している財源ではないという点です。
輸出還付金の原資は、国内取引の中で徴収された消費税(その多くは事業者が価格に転嫁したもの)です。
つまり、国内経済の中で発生した消費税収の一部が、制度上、輸出企業への還付という形で戻っていくことになります。
こうした資金の流れが、制度として組み込まれています。
そのため、輸出還付金が事実上の輸出補助金だとしても、政府、特に財務省の財布は少しも傷みません。
国が身銭を切ることなく、既存の税収構造の内部で完結する仕組みになっているわけです。
しかも、この支援は補助金として予算に計上されることはありません。
税制の内部処理として行われるため、誰の負担で、誰が得をしているのかが見えにくい制度になっています。
今回の衆議院議員総選挙で争点の一つとなった「食品の消費税ゼロ%」についても、制度上、特定の産業には輸出還付金と同じ効果をもつ還付が生じます。
特定の産業とは、食品メーカーです。
ゼロ税率とは、売上(課税売上げ)には消費税を課さない一方で、仕入れ(課税仕入)や投資の際に支払った消費税については、全額が還付される仕組みです。
食品の消費税がゼロ%になれば、原材料、包装資材、物流、エネルギー、設備投資など、食品メーカーや大規模流通業が支払った消費税は、国から還付されることになります。
重要なのは、還付金が発生したからといって、その分が必ず価格引き下げに使われる保証はない、という点です。
価格は市場で決まります。
仮に価格が据え置かれれば、還付された消費税分は、そのまま企業の収益改善につながります。
これは特定の企業が悪いという話ではありません。
制度が、そうした行動と結果を必然的に生む構造になっている、というだけのことです。
しかも、この還付金の原資も、やはり既存の消費税収です。
新たな国費が投入されるわけではなく、政府の財布が傷むこともありません。
以上を踏まえると、消費税とは、単なる「安定財源」ではなく、国内経済に広く負担を発生させる一方で、輸出型・大規模事業者に有利な構造を内包した税制だと言えます。
政府の目的は、利益を上げることではありません。
本来、政府の役割は「経世済民」、すなわち、世を治め、民の暮らしを豊かにすることにあります。
消費税も、その目的を達成するための手段にすぎないはずです。
しかし現実には、手段であるはずの消費税が、目的そのもののように扱われてはいないでしょうか。
問われているのは、善意ではなく、仕組みです。
この制度は、どのような行動を事業者に強制し、どのような資金の流れを固定化し、どんな経済構造を温存しているのか。
そこまで含めて問い直さなければ、消費税をめぐる議論は、いつまでも表層的なままで終わってしまいます。


