政府は11月28日、2025年度補正予算案を閣議決定しました。
一般会計の総額は18兆3034億円、国費ベースでは21.3兆円に達し、新型コロナ禍以降で最大規模となります。
物価高対策や成長投資を目的としており、高市政権は「責任ある積極財政」を掲げています。
しかし、私は強い懸念を抱いています。
その理由は、歴代政権が繰り返してきた――「本予算で緊縮 → 補正で“調整程度の積極”」――という構図が再現されかねないからです。
補正予算はあくまで補助的な役割であり、国の進むべき方向性を決めるのは本予算です。
したがって、今回の補正がどれほど大きくとも、来年度(2026年度)の本予算で積極財政が実現されなければ、日本経済の構造的な立て直しにはつながりません。
その本予算に向けて、いま最も大きな懸念材料となっているのが、連立与党である日本維新の会の存在です。
維新は過激な新自由主義路線を取っている政党です。
「小さな政府」「行政の効率化」の名のもとに、国民生活に不可欠な公共投資を抑制する政策スタンスを持っています。
新自由主義(ネオ・リベラリズム)は、国家が供給力を再建するための積極財政とは根本的な思想において相容れません。
さらに、維新は今回の連立の条件として「衆議院議員定数の1割削減」を最重要課題に掲げています。
現在の定数465人のうち、比例代表を中心に約50議席を削減するというものです。
維新幹部からは「比例でバッサリいったらいい」との発言もあり、同党がこれを自党の象徴的成果として強く推進していることは明白です。
加えて、法案成立後1年以内に削減方法の結論が出なければ、自動的に比例代表50議席削減を実行するという「サンセット条項」の導入まで要求しています。
このことは、議席削減を実現するために政権与党へ最大限の圧力をかける構造を意味します。
つまり、維新は自党の政治的面目を立てるために、政権の生命線である来年度本予算を政治取引の材料にできる立場にあります。
高市総理が実現したい積極財政政策が、維新によって“人質”にされる可能性は、論理的に十分あり得ます。
物価高、インフラ老朽化、少子化、防衛力、教育力の不足――国民生活と日本の持続性を脅かす課題が山積する中で、高市内閣が掲げる「責任ある積極財政」はまさに国民のための政策です。
一方、議員定数削減は、国民生活に直接寄与しないうえ、支持率獲得のためのパフォーマンスである側面を否めません。
にもかかわらず、自党の政治的アピールを優先し、国民の生活と日本経済の立て直しを後回しにするようなことがあれば、それは断じて容認できるものではありません。
真に試されるのは次年度本予算です。
高市政権が「責任ある積極財政」を有言実行できるのか。
それとも、維新との政治取引に押し切られ、再び緊縮へと逆戻りするのか。
積極財政をめぐり、決定的な岐路に立っています。


