川崎市民プラザの日本庭園に、国宝「如庵」を忠実に写した茶室「小高庵」があることをご存知でしょうか。
昭和54(1979)年の開館に合わせて建てられた、川崎市が誇る文化資産です。
市民の稽古や茶会で長年活用されてきただけでなく、かつては将棋の名人戦(第42期・44期)や囲碁の天元戦(第10期)の対局会場として使われた実績もあります。
さらに、表千家の前家元・而妙斎宗匠も訪れたことのある由緒ある茶室であり、川崎が全国へ誇る文化拠点でもあります。
しかし、市民プラザ現施設の利用終了が令和8年度末に迫る中、小高庵を存続させるのかどうかが検討されています。
こうした状況を受け、「小高庵を存続させてほしい」という陳情(陳情第124号)が提出され、11月13日の川崎市議会・文教委員会で審査が行われました。
審査では市民文化局より、「法的な文化財指定がないため文化的価値があるか判断できない」との答弁がありました。
これに対し私は、文化の価値は指定の有無ではなく、市民が育ててきた歴史に宿ることを強く訴えました。
小高庵には二層の価値があります。
一つは、国宝如庵の写しとしての原典性。
もう一つは、約半世紀にわたり市民が文化を体験し、継承してきた歴史的価値です。
文化財学では、写しであっても地域と時間の中で使われ続けることで、原型的価値(authenticity)から歴史的価値(historicity)へ昇華するとされています。
小高庵はすでに「川崎小高庵」として固有の文化的文脈を獲得しており、失えば取り返しがつきません。
つまり、失うのは建物ではなく、川崎の文化史そのものです。
そのため私は、必要な修繕を行い、状況に応じて安全な場所への移築も視野に入れつつ、茶道文化の継承拠点として活用し続けるべきだと求めました。
議論の結果、陳情は採択され、市は小高庵の継続利用に向けた検討を進める方針を公式に受け止めました。
まだ結論は出ていませんが、「市民の文化財を、市民の手で守る」ための確かな一歩が踏み出されました。
今後は、現地保存か移築か、レッドゾーン対策を含めて具体的方針を議論していきます。
小高庵は川崎市が未来へ誇るべき文化遺産です。
私は引き続き、川崎が誇る文化を未来へ手渡すため、議会で全力を尽くしてまいります。


