拝啓 小泉進次郎様

拝啓 小泉進次郎様

拝啓 小泉進次郎様。

私は、あなたの農業政策に真っ向から反対するものです。

農協が我が国の食料安全保障を担っていることを、十分に理解されておられないからです。

しかもその理解不足は、農協にとどまらず、日本農業全体にかかわる政策認識にも及んでいます。

その理由を以下、三点にわたって申し上げます。

第一に、農業協同組合(JA)に対する無理解と誤った認識です。

農協は、農家が大企業に買い叩かれないように共同販売を行い、高金利から守るために独自の金融・共済事業を築いてきました。

これこそが農協の存在意義であり、農家と消費者の双方を支える仕組みです。

経済事業が赤字を抱えることがあっても、それは農家や消費者への還元を優先しているからであり、金融・共済事業の収益で補う「総合農協」の循環構造によって維持されています。

この構造を断ち切れば、農協は弱体化し、農家は再び買い叩かれ、消費者も高値に苦しむことになります。

第二に、非現実的な農業政策と空論です。

あなたが掲げる「スマート農業と輸出」政策は、日本農業の現実を踏まえない空論にすぎません。

日本のコメは国際価格に比べて割高であり、世界市場におけるジャポニカ米のシェアもわずかです。

補助金を投じて大量輸出をすれば一時的に売れるかもしれませんが、それは国際摩擦を招くのは必至であり、とりわけ米国が看過するはずもなく、強い異議を唱えてくることでしょう。

そのための対応戦略を、あなたは一度でも考えたことがあるのでしょうか。

また、スマート農業は初期投資が重く、零細農家にとっては「セーフティネット」ではなく負担増となります。

さらに、日本の農地は中山間地域が多く、欧米のように容易に農地集約化を進められる地形ではないため、無理な集約化はむしろ生産コストを押し上げる結果を招きます。

第三に、誤った情報に基づく批判と外部勢力の影響です。

「農協がコメ価格をつり上げてきた」という批判も事実に反します。

統計を見れば、過去30年、コメ価格は下落し続けてきました。

また「農協からしか資材を買えない」といった言説も根拠がありません。

なにより懸念すべきは、海外資本が日本の農業流通に食い込もうとする動きです。

農協たたきをする人たちは「カーギル社による全農乗っ取りの意図」を全く理解されていないようですが、米国の穀物メジャーであるカーギル社が全農の子会社である全農グレイン(全農の商社部門)を買収しようとしているのは、いまや歴然たる事実です。

あなたの農協改革発言は、その背景と無縁ではないはずです。

事実、カーギル社は、遺伝子組み換えでない作物を扱う全農グレインを排除したいと考え、「協同組合ではダメだ、株式会社化せよ」と日本政府に要求したと仄聞しています。

全農グレインの親会社である全農が協同組合であるため、カーギル社は全農グレインを買収できないからです。

これもまた、農協が協同組合であるがために我が国の食料安全保障が守れている一つの事例です。

しかしその後、あなたが推進した農協改革によって、いつでも全農を株式会社化できるように法改正が行われてしまいました。

あなたを含む一部の政治家や言論人が、このような海外企業の利益のために日本の食料安全保障を脅かす政策を推進しているのです。

以上の点から、小泉進次郎氏の農業政策は、日本農業の歴史的経緯も現場の実情も理解せず、外部勢力の意向に沿う危ういものと断ぜざるを得ません。

私は、農家を守り、消費者を守り、そして国の安全保障を守る立場から、この誤った農業政策に断固反対いたします。

これは、ひとえに国民の命と暮らしを守るためであります。