ことし2025年産の新米価格は、例年を上回る水準で推移しています。
一部の銘柄では備蓄米放出により小売価格が下がった例もありますが、平均価格は前年を依然として上回っています。
これは偶発的な市場現象ではなく、小泉農相の下で誤った需給見通しが続いた結果にほかなりません。
農林水産省は「コメ不足」を認めるまでに長期間を要し、需給見通しの誤りをようやく認めましたが、その背景には統計予算や人員削減による「調査能力の喪失」という制度的欠陥があります。
農政の基盤である統計が機能不全に陥れば、政策判断は常に後手に回り、農家も消費者も不利益を被ります。
さらに近年のコメ消費増加は、豊かさの象徴ではなく、国民の実質所得低下による「劣等財化」の現れです。
肉や魚を十分に買えない家庭が、安価なコメでカロリーを補うしかない状況に追い込まれているのです。
これは日本社会の貧困化を示す深刻な兆候であり、食料安全保障に直結する問題です。
そのようななかで、政府が備蓄米を流通業者を介さず小売大手に随約販売したことは、単に業界秩序を乱しただけでなく、価格形成の仕組みを歪め、農協が担ってきた「概算金制度」というリスク吸収機能を空洞化させました。
農協の弱体化はすなわち日本農業の弱体化にほかなりません。
小泉農相は農業の集約化を推進しようとしていますが、日本では地形や水利条件の制約から、規模を拡大すればするほど管理コストが増大するのが現実です。
欧米のように広大で均質な農地を前提とした「大規模化による効率化」は、日本では成立しません。
そうした構造的制約を無視して集約化を進めれば価格競争が激化し、その結果、小規模農家の廃業が加速し、ますますもって農村の過疎化が進みます。
この過程で「農業労働力不足」を理由に移民導入が正当化される危険があります。
実際に米国農業は移民労働に大きく依存しており、日本も同じ轍を踏まされかねません。
なお、農協が農家からコメを預かり、価格変動リスクを吸収する「概算金」という仕組みは、農家の生活を守るうえで不可欠です。
民間業者の買い取りは市場価格に直結するため、不作や価格暴落の際には農家が直撃を受けます。
このように、農家を守る防波堤ともいえる概算金制度を、農水省は廃止しようとしています。
何度でも申し上げます。
農協は日本の食料安全保障を担う不可欠の存在です。
にもかかわらず、その農協解体を公然と唱える小泉農相が「次の総理」に最も近いとされている現実に、私は深い絶望を禁じ得ません。